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なぜJR東日本は消滅寸前のラグビー部を引き取った コストは2桁億円…渋谷駅長→経営トップ、再建の青写真とは

試合前の練習ウェアも新調の胸にJE東日本のロゴ、背中には古巣NECがスポンサーとしてプリントされていた【写真:吉田宏】
試合前の練習ウェアも新調の胸にJE東日本のロゴ、背中には古巣NECがスポンサーとしてプリントされていた【写真:吉田宏】

JR東日本が掲げる「四方良し」の理念とは

 そんな思いを抱きながらチームが完全移譲されて3か月を過ぎた中で、池田代表の頭の中にも、チームが試合で勝つことと同時に、取り組むべき可能性、アイデアも浮かび上がる。

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「少子化が進む中で、スポーツをやる若者自体も減ってきているので、そこからしっかりと小学4年生から中学3年生のスクール、アカデミーのようなところを充実させていく必要はあります。そこには女性も入ってもらってとか、後は高齢者の健康増進とかにもラグビーのパス回しだけでもやってもらうとか、いろいろと体にいいことも出来ると思います。ラグビーのノウハウを使って、誰でも入りやすいものを作っていくとかも考えていきたい。

 後は鉄道なので、ラッピングを施したラグビー列車を、山手線で一周させるとかですね。箱根駅伝みたいに各チームが襷を繋ぐようなイベントをしたり、いろいろなアイデアを考えていきたいですね。そういうものに知恵を絞って、最終的には昨季のコベルコ神戸スティーラーズとクボタスピアーズ船橋・東京ベイの決勝のような試合は、リーグ、参画チーム、ファン皆で盛り上げるような、そういう機運を作れればいいでしょうね。東葛エリアでは、自治体でのスポーツ振興メニューに沿いながらチームとして寄り添えるものには寄り添っていこうと考えています。ただし、チーム全体のパフォーマンスは当然、クーパーHCや太田GMに確認しないといけないので、そこに無理な負担を掛けない範囲でということになりますが」

 鉄道事業というビジネス界で働いてきた経験を踏まえた上で、リーグワンが掲げる事業化、そして将来的なプロ化という可能性については、明確な意見が返ってきた。

「現時点では(プロ化が)出来るとは思いませんね。プロの選手と話をしていて非常に強く思ったのは、皆さん結構不安なんですよね。将来のことを不安に思っている。すごく実力のある選手でもです。田中フミ(史朗)さん(元SH、現GW東葛アカデミーディレクター)のように自分でいろいろやっていける方って、そういないと思います。いま選手との1対1の面談をプロの選手から始めていますが、そのプロ選手でも社員になりたいという方が何人かいるので、軽々には言えませんが、そんな制度(プロ選手の社員への転換)も勉強していきたい。選手たちが安心してプレー出来るということ、先々の安心感をどういう風に仕組みとして確立して、伝えていけるかというのも大事だと思います」

 ラグビー畑にどっぷりと浸かってきたのではない、ビジネス界で活躍して、鉄道マンとして渋谷というメガステーションのトップを務めた人物が指摘する、事業化・プロ化への意見は、ラグビー、リーグ関係者も傾聴する価値はある。そんな声も咀嚼しながら、現状のリーグをどう変化させ、変化させないのか。一貫性の欠如は避けるべきではあるが、リーグ立ち上げ当初の理念をもう一度“洗い直し”した上で、リーグとしての新たなビジョンを焼き直してもいいだろう。

 対外への視点と同時に、代表として内側、つまりチーム・選手に求めるもの、期待することも聞いてみた。9月末の時点で、メンバーは社員選手13人、プロが35人という編成。この先は、JR東日本として引退後に社内で仕事を続ける社員契約選手と、即戦力としてのプロも積極的に採用していくというが、プロアマを問わず求めるものがある。

「やはりラグビーをやっている選手たちが素晴らしいと思っていただけることが大事ですね。選手のインテグリティとかロイヤリティとかですね。JR東日本のラグビーチームというのは、外から見ていても非常に真摯なチームだというカラーを見せて欲しいのと同時に、選手一人一人が、やはり夢を実現出来るチームでもありたいですね。例えば他のチームから移って来た時に、社員選手だったらセカンドキャリアを考えて、中には駅長になる方も出てくると思います。そんな可能性がある、温かいチームにしていきたいですね。私達はB to C(企業対消費者)の企業として“四方良し”という言葉は使っているのですが、チームが認知度、実績共に含めて定着していくことで、地域、選手が皆一緒にいいものを享受出来るようなチームを作っていくことが大事かなと思っています」

 四方良しとは、古の時代、近江商人が仕事の理念とした「三方よし」、つまり売り手、買い手、世間の三方の利がある商売をしていく共生の考え方に「未来よし」を加えた経営理念として、喜勢社長も訴えてきた。そんなビジョンの一環として、社員選手が研修のため10月末から松戸や柏などの駅に、研修のために配属されるという。

「もう制服も採寸していますけれど、背の高い、大きな駅員さんが、お客様、ファンの前で仕事もして、JR社員の中でも身近な存在になってキャリアを積むのと同時に、12月13日からの試合(リーグワン公式戦)に来ていただけるファンの掘り起こしもしていきたいですね。弊社には都市対抗に出ている野球チームもありますが、そのOBメンバーは今、社内ですごく活躍しています。なので、この先はラグビーでも、そんな人材を育てていくべきだと考えています」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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