なぜJR東日本は消滅寸前のラグビー部を引き取った コストは2桁億円…渋谷駅長→経営トップ、再建の青写真とは

生かされる渋谷駅駅長の経験「お客様、駅員を毎日守る…強い決意がないと出来ない」
同代表の言葉の背景には、喜勢社長を中心にJR東日本グループとして2025年に打ち出した「勇翔2034」という経営ビジョンがある。このビジョンで語られている中で軸となるのが、従来の鉄道事業=「モビリティの価値創造」と並列で訴える「生活ソリューションの価値創造」だ。
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「少子化で地域性などの環境の変化が早い中で、やはり鉄道だけでは企業の存続もそうですし、地域問題の解決も出来ない。なのでこのビジョンでは、地域の課題解決をそこに住む方々と一緒にやろうという、ちょっと鉄道会社を越えた取り組みをしようという中で、今回のラグビーを通じて地域の交流人口を増やすとか、地域の教育に参画するとか、ラグビー協会全体の発展に寄与するということを純粋に打ち出したいという形です。このスポーツを通じて地域の課題を解決するということと、それに加えて企業としての一体感の醸成ですね。グループとしての一体感を持とうというところでも、このチームの持つ可能性を追求していきたい」
グループ各社も含めると7万人の社員を抱える巨大企業を率いる喜勢社長だが、このビジョンについて語る中で「ヒト起点」を強調している。ラグビーが持つ絆や団結・連帯というキャラクター、そして東葛に根差したクラブとしての活動、事業展開が、巨大企業が人起点での市民との繋がりを深めていくためには価値のあるツールだという判断も、チームを引き取った大きな要因となった。
そんなチームのトップを任された池田代表だが、任命には驚きも隠せなかったという。
「今年の3月15日着任でラグビー準備室に加わりましたが、全く携わってこなかった競技ですので驚きました。正直、不安もありました。JR東日本としても、野球部や女子柔道、ランニングチームなどのスポーツチームはありますが、プロのラグビーチームを運営するノウハウはありませんでした。選手の契約であったり、スタッフを集めること、スポンサーとの契約とかですね。地域連携の方は比較的JRでも近いものがあるのですが、とにかく初めてのことばかりで、NECさんから来ていただいた太田(治)GMをはじめ、皆さんに教わりながらやっているところです」
中学時代は野球、高校では陸上に打ち込んだ同代表だが、「人の役に立ちたい」と大学卒業の1993年に入社したJR東日本では、電鉄事業というレールの上を走ってきた。本人は「キャリアとしては結構現場が多い」と語ったが、ここまでの社内での経歴も総武線市川駅勤務をはじめ、財務、大宮駅助役、戸田公園駅駅長、グループ会社への出向、本社営業部等を経て、ラグビーという全くの未知の世界へ入って来た。「学ぶことばかり」と苦笑する一方で、3月の準備室着任、そして7月1日に「グリーンウォリアーズ」として本格的に始動してからここまでの経験で、自分自身のキャリアと通じるものも感じているという。
「不安の中で、上司ですとか、当然、喜勢社長ともお話ししてきましたが、私自身が経験してきたものと通じる部分も感じ始めています。渋谷駅長だった時の経験ですが、この駅は若者のエネルギーもすごいですし、海外の方も非常に多い。例えば、ハチ公の銅像やスクランブル交差点は、ニューヨークのタイムズスクエアのような観光資源になっています。そんな中で、お客様たちを安全・安心にホームでの連絡(駅内移動、乗り換え)や階段での転落を防止することが重要ですし、お客様同士のトラブルだったり、駅員も被害に遭うことも結構あります。駅長という仕事は、そんなお客様、駅員を毎日きちんと守ることがすごく大事で、強い決意がないとやはり出来ないと感じていました。このチームでも、選手の事を信頼するとか、太田治GM、グレッグ・クーパー・ヘッドコーチ(HC)が仕事をやりやすい環境を作る、そこをJR東日本の上層部とも連携してやっていくところに通じるし、決意を持っています。駅長が上とのパイプ作りをしていたのともよく似ているなと思いますね」
話を聞く中で、池田代表が「安全・安心」という言葉を何度も繰り返していたのが印象に残った。渋谷駅長であれば当然の重要な言葉だろうが、ラグビーチームが活動し、強化を進めていくためにも、選手、スタッフらが、不安や不満なくラグビーに打ち込める環境を作ることも安全・安心の範疇であり、肩書きが「駅長」から「代表」に転じても、変わらず自分にとっての重要なミッションだという思いが言葉に滲んだ。
渋谷駅長が日々の膨大な人流の中で、様々なトラブルに直面しながら、乗客の安全と移動を確保して電車を動かしていくのと同じように、グリーンウォリアーズという新しいプラットフォームの上で、選手、スタッフをどう安全・安心にオペレーションして、勝利という目的地へ運行させるのか。鉄道マンでありメガステーションのトップという経験、手腕を発揮する挑戦でもある。
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