「日本の高校野球に進んだらプロになれない」 15歳で単身留学、パン1枚の食事…ドラフト戦線に現れた「カナダの大谷」の半生――ブリティッシュコロンビア大・杉本寛斎
22日のプロ野球ドラフト会議を前に、異色の逸材が注目を集めている。カナダの名門ブリティッシュコロンビア大に在籍する23歳・杉本寛斎投手。最速158キロ、打球速度170キロ超の二刀流で、今夏の日本遠征では複数のNPB球団が視察に訪れた。だが、中学時代はレギュラーにもなれなかった。15歳で海を渡り、異国で生き抜くために野球を磨いた8年間。夢の境界線に立った男の半生とは。(前後編の後編、取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

複数のNPB球団がマーク、“ドラフトの隠し玉”23歳・杉本寛斎とは
22日のプロ野球ドラフト会議を前に、異色の逸材が注目を集めている。カナダの名門ブリティッシュコロンビア大に在籍する23歳・杉本寛斎投手。最速158キロ、打球速度170キロ超の二刀流で、今夏の日本遠征では複数のNPB球団が視察に訪れた。だが、中学時代はレギュラーにもなれなかった。15歳で海を渡り、異国で生き抜くために野球を磨いた8年間。夢の境界線に立った男の半生とは。(前後編の後編、取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
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「ドラフト隠し玉はカナダの大谷!」
スポーツ紙にこんな見出しが躍った10月のある日、当の本人はオンライン画面の向こうで頭をかいていた。
「来週、試験があって……平均6割取れないと試合に出られないルール。全力で勉強してます。必死です。野球以外はめちゃくちゃ勉強です(笑)」
転機は、中3の秋。
京都で生まれ、小1で白球を握った。「プロ野球選手になりたい」。でっかい夢に反して体は小さく、投手も捕手も遊撃手もやり、最後は二塁手に行き着いた。だが、レギュラーも取れず、高校からの誘いもない。「このまま高校野球に進んだら、プロ野球選手になれへん」
そんな時、カナダの1週間野球体験留学の広告が目に入った。「これだ」と思った。すぐに申し込み、異国の野球を体感した。
甲子園を目標にした競争の激しい日本とは対照的に、のびのびとして、体の成長を待つ猶予もあると思った。帰国後、「行きたい」と両親に懇願。中学卒業後に単身カナダに渡り、現地の高校に通いながらクラブチームでプレーした。
杉本寛斎とは何者なのか。
生きていくために野球をする。
そんな日々だった。
ホストファミリーの家で暮らしたが、食事が極端に少なかった。食パン1枚だったことも。食費は払っているのに、おかわりを求めると白い目で見られた。英語も不自由。「表面上は家族だけど、ビジネスという面もある。幼いなりに大人の世界の生きづらさを見た」。言葉の通じない異国で味わう孤独。留学費を出してくれた両親への申し訳なさ。泣いた夜は、数え切れない。
生き抜くために野球が必要だった。
「とんでもない挫折だった。英語は喋れない。でも喋るしかない。喋らないと食事も生活もできない。チームで数少ないアジア人。友達を作るには野球の技術だけ。プレーで魅せて仲良くなるしかない。結果を出して初めて認めてもらえる」
英語も野球も、選択肢は「やる」一択。毎日が崖っぷち。それが成長のガソリンになった。
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