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なぜJR東日本は消滅寸前のラグビー部を引き取った コストは2桁億円…渋谷駅長→経営トップ、再建の青写真とは

チーム譲渡からの再興を目指すラグビー・リーグワンのJR東日本グリーンウォリアーズ東葛・池田克弘代表に話を聞いた。日本選手権3度の優勝を誇ったNECグリーンロケッツ東葛から7月に新体制として始動。12月に開幕するリーグではディビジョン2からの巻き返しに挑む。旧国鉄時代の戦前からラグビー部を保有してきた伝統はあるが、JR東日本として国内トップレベルのリーグに初めて参入する。鉄道事業では国内最大級、日本でも有数のトップ企業はなぜ低迷する古豪ラグビーチームを引き取ったのか、そして新生チームとして何を目指すのか。元渋谷駅長という経歴を持つ鉄道マンが、事業化に挑むリーグワン、そして日本ラグビーをどう見ているのかが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

チーム譲渡からの再興を目指すJR東日本グリーンウォリアーズ東葛【写真:JR東日本グリーンウォリアーズ東葛提供】
チーム譲渡からの再興を目指すJR東日本グリーンウォリアーズ東葛【写真:JR東日本グリーンウォリアーズ東葛提供】

リーグワンのJR東日本グリーンウォリアーズ東葛・池田克弘代表インタビュー

 チーム譲渡からの再興を目指すラグビー・リーグワンのJR東日本グリーンウォリアーズ東葛・池田克弘代表に話を聞いた。日本選手権3度の優勝を誇ったNECグリーンロケッツ東葛から7月に新体制として始動。12月に開幕するリーグではディビジョン2からの巻き返しに挑む。旧国鉄時代の戦前からラグビー部を保有してきた伝統はあるが、JR東日本として国内トップレベルのリーグに初めて参入する。鉄道事業では国内最大級、日本でも有数のトップ企業はなぜ低迷する古豪ラグビーチームを引き取ったのか、そして新生チームとして何を目指すのか。元渋谷駅長という経歴を持つ鉄道マンが、事業化に挑むリーグワン、そして日本ラグビーをどう見ているのかが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

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「午前中はスポンサー様回り、JR、グループ企業の各職場にチームの紹介、社内会議で状況説明に使って、午後は週2、3日はこっちで選手、スタッフと一緒という生活です」

 NEC時代から継続使用する千葉・我孫子市のクラブハウスで、新生グリーンウォリアーズ(GW東葛)のトップが穏やかな物腰で“新しい日常”を語り始めた。池田代表にとっては、JR東日本でもトップクラスの乗降客を誇る渋谷駅長だった2年前には思いもよらない転身ではあったが、7月からは鉄路を芝生のラグビーピッチに切り替えて走り始めている。

「昨年12月に譲渡の発表があって、3月から新宿のJR東日本本社に人材戦略部ラグビー準備室が立ち上げられました。そこに私も入って、移譲のためのチームのノウハウを引き継ぐ作業が始まりました。その当時からNECさん、この我孫子のグラウンドにも何度も来たし、試合にも足を運んできましたね」

 選手・スタッフと同時に、話を聞いたクラブハウスや隣接するグラウンドという活動環境も含めた大型譲渡。借り受けではあるが、NEC我孫子事業所内のラグビーチームとしての施設は、既にチーム専用出入口が造られ、フェンスなどで「敷地外」へと仕切られ活動が続く。

 参画チームの事業化を目指してトップリーグがリーグワンへと改変されたのが2022年。この大転換を前に、水面下ではNECのチーム譲渡話は何度も浮上していた。昨年8月には、本社、チームが2026年のシーズンをもってのリーグ退会を正式に発表。受け入れ先がなければチーム消滅という最悪のシナリオもあった。旧新日鉄釜石ラグビー部(現日本製鉄釜石シーウェイブス)のような強化縮小、活動形態の変更等の事例はあったが、「日本一」のタイトルも手にしたチームが存亡の危機を迎える、ラグビー界では過去にない深刻な事態。そこに、思わぬ国内トップ企業が“救済”の手を差し伸べたのが今回の譲渡劇だった。

 チーム側にとっては、まさに“わらしべ長者”のような転換だったが、ではなぜJR東日本はラグビーチームを譲り受けたのだろうか。

「昨年の譲渡発表の時にも社長の喜勢(陽一)からの説明もありましたが、柏市やここ我孫子市など東葛8市との地域連携協定というのはNECさん、チーム(グリーンロケッツ)が40年間築き上げてきた財産です。ここを引き継ぐこと、そして常磐線沿線が比較的私たちの事業エリアであるのと同時に、例えば流山、野田市といった地域はJRの足跡がないですし、白井市、印西市、鎌ヶ谷市といった千葉ニュータウンに繋がる地域も、発展を続ける中で弊社との関わりが強くない。こういう場所で、私達の企業の安全・安心という部分の取り組みをお伝えしていくことがミッションになると思っています」

 JR東日本が日本有数の企業である一方で、市民の足となり、日々の生活を支える包括的な鉄道事業者だからこそ、密接に地域・市民レベルで交流を続けてきたラグビーチームに価値、存在意義を見出したことが受け入れを後押しした。事業の基軸とはいえ、いまや線路の上に列車を走らせるだけが仕事ではないJR東日本にとって、チームが拠点とする東葛エリアが、顧客サービスと同時に新たなコミュニティーとの接点を持つには魅力のある地域だったことも“わらしべ移譲”に繋がっている。

 リーグワンチームの場合、2桁億円の運営コストがかかるのが現在の相場だ。JR東日本という企業にとっては大きな額ではないとしても、ラグビーチームが大きな収益を生んでいない現状では、企業が新規にチームを持つことも議論になるのは間違いないが、池田代表はこう説明する。

「ここは経営者の方針が大きいのかなと思います。NECさんの譲渡も、最後は森田隆之社長の判断が大きかったし、それが1つの企業としての判断になったと思います。私どもの喜勢社長はスポーツを通じて社会貢献しようということなので、あまり収益性や経費というところに私は指示を受けていないですね。JR東日本がラグビー界全体の発展のためにやればいいということと考えています」

 企業が何かに投資すれば、そこにリターンを求めるのは当たり前のことだが、同代表はこう続ける。

「リターンというものを考えるとすれば、そこはやはり信頼感だと思います。私たちの場合は、愚直に地域に入って、そこで暮らす皆さんに愛されていることがチーム評価の一つです。勝つことと同時にインテグレート(統一、一体感)が重要だと思います」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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