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世界8傑目前…エディージャパンは本当に強くなった? 9月3連勝、強敵フィジー撃破でも残る“最後の宿題”

アメリカ戦でも見えた光明 象徴的だった開始9分のアタック

 反応の速さ、判断力は、アメリカ戦でも何度か光明を見せていた。象徴的なのは、開始9分のCTBライリーのトライまでの一連のアタックだ。自陣22mライン手前のラインアウトからの連続攻撃。SO伊藤から内返しのパスを受けたFBサム・グリーン(JR東日本グリーンウォリアーズ東葛)が、敵陣22m手前まで駆け込みラックにすると、相手防御が十分に戻り切れていない中で、日本選手はブレークダウンに複数人が素早くサポートに入り、「次」へ備えたアタックラインには、6人の選手がセットアップしていた。アメリカはかろうじて3人が防御ラインを形成したが、ライリーに容易く突破されてゴールラインを明け渡している。

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 このトライまでの流れは、日本が11月のテスト、さらに来年のW杯で勝ち進むために欠くことが出来ない、先にも触れた「常にボールが動き続けるラグビー」「相手の足を止めないアタック」の萌芽だと考えたい。ラインアウトからの自陣での連続攻撃から、接点は作っても、ワークレートを生かした素早い集散による速いパスアウトでボールをピッチの縦軸に停滞させない。それによりアメリカのディフェンダーの足を停めさせずに、伊藤がスペースを見出し、グリーンが突く。敵陣に攻め込んでも、相手のカバー防御がセットアップする前にはボールを展開して、フィニッシュの作業に入っていた。

 世界ランクで2つ下位のアメリカが、さらに数人の主力クラスを欠いていたことにも助けられたのは間違いないが、それでも、日本のボールを止めず、常に相手を動かし、揺さぶるアタックが実戦で見え始めた。ラグビー界で「揺さぶり」といえば、早稲田大が信条とするボールを左右に振りながら相手を崩すプレーの代名詞だ。その一方で、エディージャパンはアメリカ戦、そしてフィジー戦での短いレンジの中でパスとフットワークでボールを小刻みに動かし続けることで、大男揃いのフィジー防御を揺さぶるスタイルをゲームで見せ始めている。

 そこに、フランス最強チーム「スタッドトゥールーザン」で視野と判断力を鍛えたSH齋藤が、相手防御の陣形を判断しながら攻撃スピードに緩急をつけ、攻めるべきベクトルを定めてボールを動かす。フィジー戦では、アンストラクチャー(フォーメーションが崩れた状況)からのアタックが脅威の相手のカウンター攻撃を警戒して、観客席まで蹴り出しタッチキックを多用しながらも、齋藤およびSO伊藤の判断で、戦術的なキックも特に後半に使ってきた。攻撃ラインを使ったボール展開にキックを織り交ぜることで、左右だけではなく前後にも揺さぶりを掛けて、相手にプレッシャーを掛けた。戦前に、フィジーを率いるセニルシ・セルヴァクラHCが「日本は彼らのDNAでもあるスピードを武器に、長い時間継続するプレーしてくるので、我々はフィジカルで圧倒していきたい」と語ったように、パワーで攻撃をスローダウンさせようと挑んできたが、日本は縦横にボールを揺さぶるラグビーで“回答”を出した。

 さらに、フィジー戦後半10分には、日本は真骨頂ともいえる攻撃を見せている。起点は、国内シーズン中での怪我でこの日が今季初の代表戦となったCTB長田の、相手にノックオンをさせた目の覚めるようなハードタックルだった。ノックオンで得たスクラムから、No8マキシが素早くサイドを縦に突くことで防御を引き寄せながらSH齋藤にパス。SO伊藤が右展開して、ロングパスが乱れたが、WTBブルアがカバーして、フィジカルを生かしてゲインラインを超える。そこから今度は左ワイドにボールを動かし、最後はタッチ際でHOの原田が防御を突破してトライチャンスを作り出した。最終的には15-12と逆転する18分のFLベン・ガンター(埼玉WK)のトライまで繋げている。前半38分のショートレンジの連続攻撃とは対照的な、広く、速い攻撃に、フィジーが2回の反則(アドバンテージ)を犯すなど、過去3戦負け続けた難敵を完璧に翻弄してみせた。

 整備されつつある防御面でフィジー戦での長田のタックルはまさに象徴的だったが、日本64%、フィジー36%というボール保持率、つまり防御時間の短さは、1年後のW杯でも理想の数字だろう。攻撃時間、ポゼッション(ボール保持時間)が長ければ、当然ながら防御時間は減少する。その中で、フィジー戦でチームトップの10回のタックルを見せた原田、竹内ら、フロントローのワークレート、献身さは日本の強みになろうとしている。アタックでは、ショートレンジで多くの選手がボールを繋ぎ、ボールを持たない仕事でチームの組織力の向上に貢献しているのに加えて、防御でも献身的にタックル、接点でのファイトを続けるラグビーが見えてきた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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