「電話は1年生が呼出音3回以内に」 部の理不尽、低迷期を知り…“クソ真面目”だった主将が令和の明治に戻ったワケ
ルディケHCから学び、明治に落とし込もうとしているものとは
現役引退直後から分析担当だった高野は、コーチとしての経験は皆無だったが、その分析およびデータから何を読み取るかという眼力や、積極的に提案を続ける姿勢をルディケHCが信頼しての抜擢だという。その後、着実にチームが力を付ける中で、同HCは高野が明治大HCに就くまでディフェンス担当を任せ続けた。強化スタッフとしての肩書きも、引退翌年の14年からのテクニカルコーチ(アナリスト)、ルディケHC就任後の18年にスキルコーチ、21年からアシスタントコーチ(ディフェンス担当)とステップアップする中で、チームも2014-15年のトップリーグ(リーグワンの前身)13位、18-19年の同7位、21年の同3位と力を付けて、22-23年に悲願のリーグワン王座に辿り着いた。
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S東京ベイでの手腕は、アナリスト時代の徹底したデータによるゲーム、プレーの数値化をベースとして、自身の経験値を踏まえながら選手が求められるプレーへの提言、そして組織的な戦術、ゲームプランの解析とチームへの落とし込みと、防御面中心に強化の根幹を支えてきた。だが、シーズンを追って力を付けるチームでの重責を担う中でも、強豪プロチームのACから学生チームのHCへと移ることには迷いはなかった。
「クボタでやってきた仕事もすごく良かったし、フランのことも大好きで、ずっと一緒にやりたいと思っていました。彼からも『自分が辞めるまで(ACとして)いてくれ』と言われていました。でも、やはり新しい挑戦をしてみたい、現状を変えていきたいという思いも常々持っていた。僕の場合、クボタの社員なので他の社会人チームでの指導は難しい。なので、伝統のある母校での指導も面白いかなと思ったんです」
勿論、ルディケHCの下で学んだものを、他のチームで実践してみたいという意欲もあった。そんな恩師ともいえる指揮官から学んだ中で、高野自身が大切にして、明治大監督としてもチームに落とし込もうとしているものがある。
「フランのすごいところ、彼からの学びは“任せられる人”だということです。そこがすごく勉強になっていて、今の僕もそうしていこうと考えています。ディフェンス担当コーチに就任した時も、まだコーチとしては素人の僕に『お前が全部好きなようにやっていい。お前の言うことは全てサポートする』と言ってくれて、その通りにしてくれた。人に責任を与えることって、口で言うのは簡単なことですが、プロの世界で結果が大事な中で尚更容易じゃない。いまこの立場になって、人に任せるのって一番難しいと思います。だから学生相手にも、口を出しちゃいけない時もあるし、リーダーが何か言おうとしている時に僕が言っちゃダメなんです。彼ら自身に任せなくちゃいけない部分もある。そういうところも気を付けています」
高野の話からは、フラン・ルディケという指導者が、自分の知識ややり方だけで強化を進めるのではなく、コーチングスタッフの能力を生かし、様々な知識、情報を融合させながら、更に強い組織を創り上げようとしていることが分かる。勿論、闇雲にコーチを信頼するのではなく、自分自身が信頼に足る力があると評価する人材を見極め、育て、権限を与え、チームの強化に役立てることで、より組織としてのクオリティーを上げてきたことが、いまのS東京ベイの実力に繋がっている。
そんなスピアーズでの学びを、高野はどう明治大学ラグビー部でも実践しようとしているのか。明治での夏までの取り組みを聞くと、高野監督が「連覇」という究極の目標に対して、必ずしも“最短距離”を歩んでいないことが分かる。
「春から夏合宿までは、基本的にベーシックなところにフォーカスを当ててきました。試合に出る15人、23人が優秀なら勝てるというのではなくて、チーム全員のベースがいまどこのレベルにあるのかを見てきました。そんな“総合力で勝つ”というイメージを、選手たちには伝えています。例えばレギュラーチームで出場できないような選手でも、彼らがすこし頑張ることでチームのベースが上がることで明大ラグビー部としての力が上がるとすごく感じていて、そこを大事にしています」
このような組織全体の質を上げていく強化こそが、ルディケHCが就任から10シーズンという時間をかけてS東京ベイを強化してきた取り組みだ。勝てるチームも重要だが、強い組織を創り上げる。そんなルディケ流の強化を、毎年メンバーの4分の1が入れ替わる大学チームで高野監督がどう生かしながら、どこまで強い地盤のあるチームを作れるかも注目したい。
戦術面では、高野監督もHCとして携わって日本一を掴んだ昨季までのスタイルがベースにあるのだが、勿論そんな“遺産”だけで今季も頂点を極めることが出来るとは考えていない。
「結局ラグビーって15人という大勢の選手でやるスポーツじゃないですか。この15人のコンビネーションをどうやってチームに馴染ませていくのか。それに見合った戦術を考えながらやっていくとうのが、これからの作業だと思っています」
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