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「電話は1年生が呼出音3回以内に」 部の理不尽、低迷期を知り…“クソ真面目”だった主将が令和の明治に戻ったワケ

今も貫く凡事徹底「選手にも口うるさく言うようにはしています」

 取り組み始めているチームは少なくないが、明治でもこの10年、20年とラグビーのトレンドになってきた「ポッド」という戦い方だけに拘らないスタイルも落とし込んできた。ポッドを簡単に説明すると、起点となるスクラムやブレークダウンから複数の選手(基本3人を1単位)が一つのポッド(豆のさや、小グループの意味)を形成して、グラウンドの横幅に一定間隔で複数のポッドを置き、連続してそのポッドを使った攻撃を仕掛ける戦術だ。防御側も同様な形態で対応していく。そこに、選手がポッドにとらわれずに動きながら陣形を作り仕掛ける攻撃を加えることで、攻撃のバリエーションを増やし、相手防御にプレッシャーを掛けていく戦い方を取り入れている。

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「ポッドは一つの動きの例としてはあるけれど、決まったポッドだけじゃなくて、それをどう崩して、どうやって新しいスペースを創っていくかとうのは大事にしていきたいですね。ここから、いろいろ引き出しを出していきます。それを学生たちに押し付けるのではなく、彼らが取捨選択をしていくので、その中で自分たちに合わないものはやらなくなっていくんです。そこで何がいいのか、何が自分たちのスタイルにフィットするのかを考えながら、戦術的な調整をしていくことになる」

 夏合宿を終えて公式戦を待つ段階だが、就任1年目の監督としてのプレッシャーを聞くと、静かに、だが間髪を入れずに「ないです」と明言した。昨季の決勝戦先発メンバーを見ると8人が卒業したが、残った選手たち、そしてすでにAチームでもプレーするSH岡元聡志(京都成章)ら新加入のメンバーにも手応えを感じている。

「去年のことは、選手たちにとってはとてもいい成功体験になっています。そこに、どうやって彼らの味を出していくのかというのが上乗せになると考えています。今季の4年生は個性豊かなメンバーです。彼らは今、どうやって去年からのプラス材料を積み上げていくかを追い求めているところです。去年の中から、同じじゃダメだからここをもっと取り組んでいこう、自分たちのスタイルを創り上げていこうというのが、いまのチームの状態だと感じています。そこを実現出来るように、僕の方でも準備、サポートを進めていきたい」

 冒頭のコメントでも分かるように、チームとしての今季の大きなミッションは「連覇」だ。大学最強を目指すチームではあるが、勝利以上に監督として重視していることがある。

「人を育てること。スポーツチームには、そういう側面が絶対にあると思います。そういうことを大事にするチームが結局強いんじゃないかと、リーグワンでの経験でも思うんです。クボタが強くなっていくステップを見ていても、やはりそういうことだと強く感じました。選手やチーム特有の文化や環境をどうやって作っていくか。そこに注力するというのはすごく大事なことだと感じますし、それは明治の監督になって更に感じています」

 今春監督に就任してから、グラウンド外でも新たな学びがあったという。

「監督になると、他の監督との交流がありますよね。他大学や高校の先生方と接する機会が増えたのは勉強になるし、楽しいです。高校の指導者を見ると、教育者として子供たちを育てている人たちって、様々な自分なりの考え方を持っている一方で、間違いなく選手への愛情を感じるんです。そこはプロのリーグワンとは全然違うけれど、本質的にはすごく大事なことだと思うし、そこが勉強になります。そんな愛情というのは、選手たちの成長をどうやって助けるかをよく考えられているなと観ていてすごく感じるんです。監督になるとHC時代以上にOBやスポンサーの方々ともお会いするのですが、そういう人たちも決まって勝敗以上に大事なものがあるとお話の節々に感じるものがあるんです。そこは結局、人間を育てる、育てて欲しいというのが大事なんだなと。僕なんて、まだ監督1年目で課題ばかりですけれど、そんな思いを持ちながら毎日取り組んでいます」

 勝つことに拘りながらも、それ以上に選手たちを人間として育てることにフォーカスする姿勢は、神鳥前監督とも通じる部分だ。前監督も3月のインタビューで「勝利も大事だが、選手が30代、40代になっても明治での4年間をいい思い出だと振り返ることが大事」と語っている。前任者から継続して重視している言葉も「凡事徹底」だ。

「やはり礼節というか、そういう部分はしっかりするのは大前提として大事にしています。凡事徹底という言葉の凡事は、小さな事、当たり前の事という意味ですが、挨拶とかルールを守る、相手に正直である、そして誤魔化さないということだと思っています。ここは選手にも口うるさく言うようにはしています。ラグビーより先に、そういう部分が結局チームや組織を作るものだというのは、多くの先輩の方々からの学びでもあるのです」

 母校に戻ってから、誰に言われるでもなく「ほんの一口」でさえアルコールを断っている実直な高野彬夫らしい話ではあるが、単なる道徳的な価値観ではない。ラグビーという競技が、ピッチ上で30人の大男が入り乱れてカオスのような状況の中で、自分たちの規律や遂行力が試されるからこそ、凡事でも目をつぶらず、些細な約束事でも守ることで、チームにもゲームプランにも秩序がもたらされ、組織として「勝利」というゴールに近づけるのだ。細かなプレーを戦術的に構築していく現代のラグビーでは、尚更“凡事”が重要な勝利へのファクターになる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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