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田中希実はなぜアジア大会5日間で別人級に変われた? イップス克服、最後に出た59秒6…父も驚いた「全身全霊、最高のラスト」

女子5000mレース後、山本有真(右)と声を掛け合う田中【写真:奥井隆史】
女子5000mレース後、山本有真(右)と声を掛け合う田中【写真:奥井隆史】

5000mのラスト1周で過去最速の59秒6

 3種目目の5000mはヤヴィとの再戦になった。スローペースからラスト1周の勝負になったが、田中は「勝機があるとしたらそこしかない」と考えていた。前日の800mの練習で、1周目は速いペースで走れたが、2周目は「もたなかった」からだ。

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 ヤヴィとの勝負は10000mよりも激しくなった。残り500mで5人の集団からヤヴィが前に出ると、田中が外側から並びかける。残り1周では田中が僅かに前に出たが、すぐにヤヴィが体1つ前に出た。バックストレートでヤヴィがギアをトップに入れ、4600mから4800mの200mを28秒2と、すさまじいスピードに上げた。だが田中も食い下がり、ヤヴィに並びかけようとするシーンもあった。

 残り170mから徐々に引き離されたが、フィニッシュでは1秒47差。ヤヴィとの差を10000mのときの半分に縮めていた。ラスト1周の59秒6というタイムを田中に知らせると、いつも以上にあれこれ考えを巡らせながら答えてくれた。

「60秒を切ったら勝機があるんじゃないかと思っていたので…めちゃくちゃ上げているつもりでも(10000mと同じ)62秒かかったから負けたんだと思っていました。59秒でも負けたのなら、もう本当に彼女のあっぱれなので。59秒で走ったら勝てる、っていう常識を覆してくる“世界”を実感しました」

 田中コーチも、5000mの走りについては高く評価した。

「全身全霊の、今までできなかった最高のラストでした。これまでは他者に前に出られたり、置いて行かれかけたりすると体が固まっていました。5000mは自身と向き合って、自分と駆けっこをした結果、あのラストスパートができたのだと思います。今できることを全て注ぎ込んだ走りでした」

 多くのレースに出場するのが田中の特徴だが、1週間経てば走りがガラッと変わる。5日間で3本を走ったアジア大会も、3本目で1、2本目とは別人のようなラストスパートを見せた。

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