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田中希実はなぜアジア大会5日間で別人級に変われた? イップス克服、最後に出た59秒6…父も驚いた「全身全霊、最高のラスト」

銅メダルを獲得した女子1500m決勝、田中(右)は今大会3つのメダルを獲得した【写真:奥井隆史】
銅メダルを獲得した女子1500m決勝、田中(右)は今大会3つのメダルを獲得した【写真:奥井隆史】

イップスを克服した田中親子

 田中が59秒台のラストスパートを見せるに至った過程に、イップスの克服があった。

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「去年までラスト200mにこだわり過ぎて、イップスみたいな状態になってしまっていました」と田中は10000mの後にコメントしている。

 悪いときはラスト200mが、「動いていないな」という感覚があると35~36秒かかっていた。それがアジア大会の10000mでは、「動いていないな」という感覚で31秒6だった。「殻を破るまでは行きませんでしたが、(ラスト200mへの取り組みを)新しい挑戦ととらえられるまで回復しています」

 前述の2023年ブダペスト世界陸上5000m決勝では、ラスト200mが30秒85で、同年のダイヤモンドリーグでも31秒前半を、2024年7月のダイヤモンドリーグ・モナコ大会では30秒4と快走していた。
だが「パリ五輪くらいから田中が気にし始めてしまいました」と田中コーチ。

「そのきっかけを作ってしまったのは私かもしれません。世界で結果を残すにはラスト200mのタイムが必要ということを繰り返し話していました。彼女がそこを意識しすぎて緊張し、自分の脚じゃないみたいな走りになってしまいました」

 昨年の東京世界陸上5000mでは、5位(14分47秒14)で通過した予選もラスト200mは33秒15、12位(15分07秒34)だった決勝は37秒85もかかっていた。今年7月に3000mで8分32秒29の日本新を出したときも33秒8かかった。

「イップスになる以前から、走れなかったらコーチを変えた方がいい、という話は何度かしていて、それも彼女にはストレスになっていたようです。そこにラスト200mのタイムのことも強調してしまったので、走れない自分と私の言葉がダブルパンチになっていたのでしょう。すごく反省しています。私もこの1年くらいは言わなくして、前向きに頑張っていこうと言い続けてきました。彼女も(田中をサポートする)チームも走れない状態から逃げず、ここに来てイップスを克服できたと思います」

 田中コーチが田中の心情に寄り添うことが、イップス克服の要因になった。田中からも最近は、父親のことを思いやる言葉が聞かれるようになった。

「今シーズンも浮き沈みがあって、父だけでなくいろいろな方を振り回してきましたが、多くの方が私を信じてくれました。その中で私と父だけに“自信を持てない病”(笑)がずっとあって。父は私のことは信じてくれても、自分自身を信じていない感じなので…父にも父自身を好きになってほしいと思っています」

 イップスのこととは別の話題としてコメントした内容だが、イップス克服の過程で親子関係、選手と指導者の関係がさらに深まったことを想像させた。

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