「日本記録を抜かれるならアネキに」 届いたLINE…日本新12秒62の裏で結ばれた2人の固い絆――青木益未
歴史的快走の裏で、もう1つの“日本新”が誕生した。陸上の富士北麓ワールドトライアルが9日、山梨・富士山GXスタジアムで行われた。女子100メートル障害の予選1組で中島ひとみ(長谷川体育施設)が、日本新記録、アジア歴代2位の12秒62を出した直後の予選2組。青木益未(七十七銀行)が12秒68を出した。もちろん記録は、中島に次ぐ日本歴代2位だが、24年福部真子(日本建設工業)が持っていた従来の日本記録12秒69を100分の1秒上回った。32歳でたどり着いた自己ベスト。その過程にあった苦悩と進化とは――。(THE ANSWER編集部・上田 悠太)

「THE ANSWER 陸上PLUS|STORY」 富士北麓ワールドトライアル
歴史的快走の裏で、もう1つの“日本新”が誕生した。陸上の富士北麓ワールドトライアルが9日、山梨・富士山GXスタジアムで行われた。女子100メートル障害の予選1組で中島ひとみ(長谷川体育施設)が、日本新記録、アジア歴代2位の12秒62を出した直後の予選2組。青木益未(七十七銀行)が12秒68を出した。もちろん記録は、中島に次ぐ日本歴代2位だが、24年福部真子(日本建設工業)が持っていた従来の日本記録12秒69を100分の1秒上回った。32歳でたどり着いた自己ベスト。その過程にあった苦悩と進化とは――。(THE ANSWER編集部・上田 悠太)
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衝撃タイムの余韻が残る中、青木は集中力を高めた。予選2組。会場を独特の高揚感が包む中、不思議と頭は冷静だった。好スタートを決めると、追い風2.0メートルの好条件も味方に「もも上げするぐらいイメージ」でスピードに乗る。途中からは「これはタイムが出せる」という手応えがあった。記録は、6月の日本選手権で出していた自己ベストを0秒11更新する12秒68。中島の12秒62には届かずも、福部が持っていた今大会以前の日本記録を超えた。
紆余曲折を経て、強くなって戻ってきた。22年4月に12秒86と当時の日本記録を出した後、少しレースに出るのが怖くなった。慢性的な左足の痛みがあった。満足に走れない。でも、結果は出さないといけない。「試合に出たくない。遅かったらどうしよう」。不安と闘っていた。その後、じっくり時間をかけて左足は完治したが、25年4月に腰椎を疲労骨折。急ピッチで仕上げた同年7月の日本選手権では太もも裏を肉離れした。
まさに負の連鎖だった。でも時間は戻せない。必死に光を探した。高いスプリント力が持ち味の反面、ハードリング技術は課題。満足に走れない時期があったからこそ、ハードリング技術をどう磨くか、考え抜いた。「自分はもっと速くなれる」。その希望だけは捨てなかった。
行きついた答えが、100%の全速力で走る意識を捨てることだった。「全力で走るのって、全力じゃ走れない。バランスを崩して自滅する。9割、8割ぐらいがうまくまとめる」と力加減を覚えた。「パワー型」というダイナミックなハードリングから、海外トップ選手の走りも参考に、無駄な動きを省いた「コンパクト」なハードリングに活路を見出した。
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