[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

ラグビー界で物議「カテゴリ制」新局面を解説 18歳で来日→日本代表に…「屈辱だった」当事者の訴え、その結末は

規約修正が議論を巻き起こした背景

 リーグ側では日本生まれの選手たちの出場および雇用機会を増やしたいという思惑から参入チームも合意の上で規約を修正。従来は、国籍や出自に関係なく日本代表および代表有資格者「カテゴリA」と定められてきた選手を、来季からは「カテゴリA1、A2」に分けて、A1は従来のカテA選手のうち、6年以上の日本の義務教育を受けた者、日本出生の両親祖父母を持つなどとし、A2をカテAのうち代表30キャップに満たない選手などと差別化する方針を決めた。

【注目】「この体重でも跳べるんだ」 月経異常や骨密度低下を経験、引退後に気づいた数字に縛られない体作り(W-ANS ACADEMYへ)

 つまり日本で小中6年以上教育を受けない海外出身選手は、日本国籍を持っていたとしても、1試合における出場枠、メンバー登録枠でもA1の枠の選手が優遇されることになる。28キャップのティムのような日本国籍を持つ代表経験者でも、30キャップに満たなければ「A2」に分類されてしまい、現行ルールよりも出場枠に制限がかかるのだ。付け加えておくと、海外出身選手の大量流入等が報酬の高騰を招き、リーグ参入チーム(企業)に過度の負担増を求めることになるのを回避する狙いも規約修正にはあった。

 この規約修正が議論を巻き起こしたのは、果たして職業(選択)の自由を謳う日本国憲法や労働基準法などに照らし合わせて、少なくともティムのような日本国籍を取得した海外出身選手に不利益が生じるのではないかという規約面、そして長らく代表選手として日本に貢献してきた、誰もが日本代表だと認める選手を、「30キャップ」で線引きすることへの心情面という双方でだった。

 そのため一部の論調では、選手のコメントも相まって「人種差別的」「レイシスト」という表現でリーグ側を糾弾するものもあった。人権擁護的なスタンスからはそう訴えられるものも、リーグ、そして統括組織である公益法人日本ラグビー協会(JRFU)の抱く背景、そして関係者の考え方を踏まえれば、差別感情が動機ではなく、強いて言えば、そのような論調、考え方への配慮不足(そこが社会的には大きな問題点でもあるが)があったと考えるのが妥当だった。

 実際にこの日の会見でも、ティムと同席したリーグ側との係争の代理人の牧野誠司弁護士は、今回の規約修正に伴うリーグ側との話し合いからは、こんな受け止め方をしている。

「決して人種差別、差別的な意図は、雰囲気としては感じませんでした。また、私はあくまでも選手(24人)の代理人ですので、この規定の良し悪しを計る上では依頼者である選手にとって良くない言及しか出来ない」

 今回の会見で同弁護士は、選手側、リーグ側双方が、裁判所へ、それぞれの主張、問題点などを書面で提出し終えていることを明かしている。選手側は公正取引委員会にも訴えている中で、協議が進んでいるのは裁判所だという。ここで傾聴するべきは、これ以降も裁判所の判断を待つのではなく、双方での話し合いを進めるという考え方だ。

「今も(リーグワンと)話し合いを継続しています。裁判所の決定というより、まず話し合いで解決したいという思いが選手側はあります。リーグ側も同じだと思うので、話し合いによる解決を、裁判所が間に入っていただいている状態で継続しているのが現状です」

 このコメントを補完するように、リーグ側もティムらの会見終了から1時間程後に、以下のような短文のプレスリリースを出し、公式サイトにもアップしている。

「現在リーグワンは、2026-27シーズンから導入する選手登録における追加の登録区分の制度(2025年5月発表)に対し、一部選手らが、東京地方裁判所に制度の施行差し止めの仮処分を求めている件について、選手側と和解協議を進めています。

東京地方裁判所における和解協議の場においては、従前発表した制度ではカテゴリA-2に該当する想定だった一部選手をカテゴリA-1とする見直し案について協議を進めております。今後、和解協議の結果を踏まえ、制度の見直しの詳細について改めて発表いたします」

 あるリーグワン関係者も「後は裁定を待つため何もしないということではなく、引き続き訴え出た選手側、裁判官とも協議を進めて、あくまでも双方の話し合いで合意を目指したい」と話し、選手側弁護士と同じ姿勢で向き合っている。

1 2 3 4

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
ABEMA
docomo
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集