5歳で死別、父はW杯3大会の怪物FW 愛された「万吉」のDNAとラグビー人生…ただ一つ、真逆だった才能――東海大・渡邊拓斗

関係者が口をそろえた「父親と180度違うもの」とは
そんな努力も追い風にして、東海大最終学年のシーズンスタートはAチーム入りを果たした。だが、それでも実戦での成長も、勝負もこれからだ。スクラムを最前線で組み合う時のアングルや相手とのヘッドポジションの取り合いなどといった技術や駆け引きも、中高、そして大学とフロントローを続けてきた選手と、まだまだ“俄か”の拓斗とは差があった。冒頭で紹介した通り自己採点も厳しかった同志社戦に続き、先発出場した春季交流戦の筑波大戦、後半から出場した早稲田大戦も、ボールキャリーで力強さを見せながらも、スクラムで相手に上手く組まれて押し込まれるシーンを何度も見せた。
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「3番としての仕事をしっかり全う出来てないですね。東海のチーム内でスクラムも組み込んでいますが、(対外試合で)全く知らない相手と組むとなった時に、相手がどう組んでくるのかとか、逆に自分はどう組んでいくか、相手にどうやってプレッシャーを掛けていくのかというのは、その場でどんどん考えていかなきゃいけない。Aチームに入っているので、経験を得るための試合じゃなくて、しっかりと結果を出していきたいです」
厳しい自己採点が続く一方で、チームは拓斗のPRとしての経験値を上げようと“プレー時間”という投資を続ける。秋の公式戦シーズンまでに、この“PR1年生”がどこまで本物になれるのか。全ては、本人がどこまで自分を磨く挑戦を諦めずに続けることが出来るかにかかっている。惜敗した早稲田戦まで、3試合のPRとしての拓斗を見てきた木村監督がこう評価する。
「まだまだですね。もうひとつ自分の形に持って行くまでにもいけてない。でも、それは本当に場数を踏まないといけないですし、ここは僕らもあまり急ぎ過ぎず、でもやはり他の競争する3番の子たちもいるので、パフォーマンスが上がってこなければ他のメンバーが入ってくる可能性あります。でも拓斗の良さは、すごく貪欲なこと。ラグビーに関しては勤勉ですね。PRとして実戦を経験して、思い通り組めないというのが現状です。今は、本格的にPRを始めて、しんどいのが当たり前だ、自分が出来ないのが当たり前だと感じて、腹を括ってとにかくやるしかないんだというマインドになったと思います。それはポジションチェンジが、ものすごくいい方向に行っている例だと思います」
恵まれた体は父親のDNAを感じさせるが、東海大、BL東京と、話を聞いた関係者が口を揃えた「父親と180度違うもの」もあった。それは、真面目さ、努力を惜しまない姿勢だった。天才肌の父は何事もいとも容易くやってみせ、3大会連続W杯出場という高みに立った。だが、息子は、自分の力を知り、足りないものを補うために、努力を惜しまない資質を持っている。木村監督が、更に言葉を続ける。
「3年生まで公式戦は出ていない。4年生でPRに転向してだと、リーグワンチームに採用してもらえるか難しいけれど、上のレベルで通用するポテンシャルは持っていると思います。そこを評価してくれるチームがあれば、採用してよかったなと思ってもらえると僕は信じています。スクラム練習で首の皮が剥けるくらい頑張っている。練習でしんどいこと一杯やって、試合で笑えるような、スクラム組んで楽しいなと思える領域に彼は絶対なれると思います。今持っている才能はどうなのかとみれば、そこまで豊かじゃない。でも拓斗は、努力するという才能は備わっていますから」
努力する才能――。亡き父から受け継いだ体と、父にはなかった資質を武器に、この原石はどこまで自分を輝かせることが出来るのか。インタビューで、拓斗はこんな言葉を漏らしていた。
「体はきついです。でも、どんどんやっていったら、体も覚えていくだろうなと思う。だからもっと(スクラムを)数やって体に叩き込まないといけないと思う」
尽きることのない努力だけが、成功の礎になる。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
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