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5歳で死別、父はW杯3大会の怪物FW 愛された「万吉」のDNAとラグビー人生…ただ一つ、真逆だった才能――東海大・渡邊拓斗

早稲田大戦でスクラムを組む渡邊(中央)、サイズ感は群を抜く【写真:吉田宏】
早稲田大戦でスクラムを組む渡邊(中央)、サイズ感は群を抜く【写真:吉田宏】

規格外だった万吉の才能「衝撃的でしたよ。怪物ですよね」

 当時の大学ラグビーで身長190cmを超えるFWも破格だったが、サイズ以上に“大物”と感じさせたのは、後輩ながら同じ部屋で主将が取材を受けている最中も寝ていた度胸だった。大学2年からLOで主力に浮上した万吉だったが、サイズに似合わないスピードと日本人離れしたフィジカルでバックロー(FL、No8)としての魅力と可能性を溢れる程に湛えていた。大学では同部屋で暮らし、東芝でも一緒にプレーした中原はこう振り返る。

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「衝撃的でしたよ。怪物ですよね。当時の日体大には190cm台の選手は結構いたけれど、万吉のようなスピードを持った選手はいなかった。それでいて強い。見た目は日本人でも、身体能力は外国人でしたね」

 万吉が日体大3年のシーズンに、チームは関東大学対抗戦グループ優勝を遂げている。優勝候補の早稲田大と対抗戦で、インジュアリータイム、敵陣ゴール前密集から万吉が飛び込むようにして防御を跳ね飛ばして奪った決勝トライが、この怪物の未来を感じさせた。

 その後、大学4年で日本代表入り。東芝府中でもバックローとして活躍して1999、2003、07年W杯に出場した。誰もが一目置くアスリートでありながら、会えば「中学までサッカーでGKしていたんですけど、今でもJ(リーグ)行けますかね。どこか声かけてくれないかな」と、受け狙い9割、本気1割で話すような男だった。いつも周囲を笑わせる存在だった。ウェートトレーニングなど地道な練習は大嫌い。中原も、何度も怒鳴りつけたという。監督、コーチに隠れて試合会場のトイレで煙草を吸う“悪ガキ”でもあったが、“隣室”の仲間と大声でおしゃべりしていたので、誰もが万吉だと分かっていた。

 そんな奔放、豪放磊落なキャラクターではあったが、酒は飲まず、今で言う“鉄オタ”で、時間があれば全国各地を電車で旅したと聞いた。同じポジションのライバル達がどんなにひたむきに努力を続けても、パワー、スピード、そして勝負勘で上回り、ポテンシャルを輝かせた才能型だった。東芝府中、03年W杯日本代表で監督だった向井昭吾は「ああいうタイプは、自信持たせて伸び伸びプレーさせてやればいい。木に登らせとけば力を発揮する」と他の選手以上に「自由度」を持たせて、そのポテンシャルをマックスに引き出す指導で育てた。

 父親の雄姿を知らずに育った拓斗も、背丈こそ劣るが、分厚い胸板や体の大きさは譲り受けた。生まれた時から拓斗を知る釜澤は「赤ん坊の頃から、手を握ると分厚いんですよ。体のパーツパーツがデカかった」と非凡さを指摘する。それでも、東海大でのラグビーは高校までとは別世界だった。

「入学した頃は、練習についていくのが大変でした。周りは強豪高校出身の選手ばかりで、技術もラグビーに対する考え方も全然違っていた。ついて行けなかったし、追い付くのも大変で、本当にカルチャーショックを受けました。先輩からもいろいろ怒られたりしたけれど、寮での生活は楽しかった。仲のいい同期も沢山いたので、ここまで頑張れました」

 大学最終学年でLOからPRへの転向。思い切った選択とも思えるが、本人は真顔でこう話す。

「高校でも、選手がいなかったこともあってHOも経験した。その時は体は大きかったんですが、大きいだけでした。東海大でもフロントローをやりたくて入って来て、でもまだラグビー自体が全然ダメだった。なので監督からは、LOでプレーしてラグビーをもう少し理解しようということで、やらせてもらったんです」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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