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「アスリートは常に強く」は間違っている りくりゅう金メダルに見た、弱さを“さらけ出す”大切さ

2月に開催されたミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートでは、記憶に残る数々の名シーンが生まれた。日本中が固唾を呑んで見守った氷上の華麗な戦いを、THE ANSWERならではの視点で振り返るスペシャル対談。プロフィギュアスケーターで五輪の中継解説を務めた鈴木明子氏と、東大スポーツ先端科学連携研究機構特任講師でスポーツ界のメンタルヘルスに詳しい小塩靖崇氏が、選手たちの“心の中”に迫る。

ミラノ・コルティナ五輪ペアSPでリフトをミスし、演技終了後に肩を落とす三浦璃来、木原龍一組【写真:スポーツ報知/アフロ】
ミラノ・コルティナ五輪ペアSPでリフトをミスし、演技終了後に肩を落とす三浦璃来、木原龍一組【写真:スポーツ報知/アフロ】

鈴木明子氏×小塩靖崇氏「スポーツと心のコンディション」対談・第1回

 2月に開催されたミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートでは、記憶に残る数々の名シーンが生まれた。日本中が固唾を呑んで見守った氷上の華麗な戦いを、THE ANSWERならではの視点で振り返るスペシャル対談。プロフィギュアスケーターで五輪の中継解説を務めた鈴木明子氏と、東大スポーツ先端科学連携研究機構特任講師でスポーツ界のメンタルヘルスに詳しい小塩靖崇氏が、選手たちの“心の中”に迫る。

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“りくりゅう”こと三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)は、五輪ペアのショートプログラム(SP)でのミスにより5位と出遅れたものの、フリーでは見事な演技を見せ、大逆転で金メダルを獲得した。この事例をもとに、スポーツにおける「メンタルの立て直し」について、スケーターと研究者、それぞれの視点から考察した。(取材・文=長島 恭子)

 ◇ ◇ ◇

――今回は「スポーツと心のコンディション」をテーマに、2月のミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート競技についてお話を伺います。まずはペアで金メダルを獲得した“りくりゅう”こと三浦璃来・木原龍一組についてです。2人のパートナーシップの在り方は、今大会で最も話題となりました。

鈴木明子(以下、鈴木)「私はミラノオリンピックの現地で、彼らの演技を客席から観ていました。SPでは本来、彼らが一番得意としていたリフトでバランスを崩してしまい、5位でスタート。まさかのミスに、演技終了直後の木原選手は客席から見ても分かるほど、『この世の終わり』といった表情でした」

小塩靖崇(以下、小塩)「その様子は、日本でテレビを観ている私たちにも痛いほど伝わってきました。でも翌日は一転して、フリーの演技で世界歴代最高得点をたたき出して優勝しました。これは本当に素晴らしい復活劇でしたね」

鈴木「はい。シングル競技はSPとフリーの間に、中1日の休息・練習日があるんですね。でも、ペア競技はSPの翌日にすぐフリーが行われる。そのため、いかにして気持ちを切り替えるかが非常に重要です。ところが、木原選手は失敗のショックからフリー当日の夕方の練習になっても、うまく切り替えることができなかった」

小塩「SP後から当日の夕方の練習まで、ずっと涙が止まらない状態だったと優勝後のインタビューで話していましたね」

鈴木「はい。悔しさで夜もあまり眠れなかったようです。彼の気持ちが切り替わったのは、本番前。璃来ちゃんが木原選手のスーツケースに仕込んでおいた、ジップロックに書かれたメッセージを読んだ時です。『今までやってきたことを信じて。私たちならできる!!』というメッセージを読み、『勝ちに行く』という気持ちを持って6分間練習に入ったと言っています。最後は璃来ちゃんの言葉が木原選手を救いました」

小塩「私もそのエピソードをテレビで知り、とても印象に残りました。木原選手の歩みを拝見すると、厳しい状況の中でもフィギュアスケーターとして競技人生を貫いてこられた方です。そうした経験の積み重ねのなかで、ご自身の感覚や信じるものを大切にしてこられたのではないかと思います。一般に、極度の緊張や落ち込みのなかでは、周囲の声かけを受け取ること自体が難しくなる場合があります。そのなかで三浦選手のメッセージが届いたのは、特別なことだったのではないでしょうか。普段から築いてきた信頼関係があったからこそ、相手の状態に気づき、どんな言葉なら届くかを自然に分かっていたのかもしれません」

鈴木「おっしゃるとおり、木原選手は意外と頑固ですし、こだわりも強い。誰の意見も素直に聞くタイプかと聞かれたら、決してそうではありません。本当に信頼しているパートナーだからこそ、極限状態のなかでも璃来ちゃんの『私たちならできる』という言葉が素直に入ってきたのだと思います」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。人物インタビュー、ヘルスケア、ダイエット、トレーニングの分野を軸に、雑誌、書籍等で編集・執筆を行う。担当書籍に『すごい股関節』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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