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「アスリートは常に強く」は間違っている りくりゅう金メダルに見た、弱さを“さらけ出す”大切さ

木原が素直に感情を出せたのは三浦だからこそだと語る鈴木明子氏【写真:松橋晶子】
木原が素直に感情を出せたのは三浦だからこそだと語る鈴木明子氏【写真:松橋晶子】

「自分の弱さを認めること」がいかに大事かを証明した

小塩「一方で、木原選手は五輪という世界中が注目する舞台でも、落ち込む姿を無理に取り繕わずに見せていたことが印象的でした。そこには、自分を貫く強さと同時に、感情を率直に出せる素直さも感じられます。その両方を持ち合わせている点が、とても印象に残りました」

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鈴木「SPであのような結果を残してしまうと、『年上の自分が強くなきゃいけない』と考えてしまう方のほうが多いと思います。でも木原選手は自分の感情を素直に出せる。ただ、それは小塩さんの言うように、彼の資質だけでなく、璃来ちゃんに対して普段から自分をさらけ出しているからこそだという気がします。だから落ち込む姿も躊躇せずに見せられたのかな、と」

小塩「そうですね。失敗をすぐに認めて、あれだけ落ち込んでいることが周囲にも伝わるほど、感情が表に出ていたということは、結果的には大きな意味があったかもしれません。というのも、つらさを無理に隠してしまうと、周囲は『大丈夫そうだ』と受け取り、必要な支えのタイミングをつかみにくくなることがあるからです。逆に、しんどさが見えることで、パートナーも『今は支える必要がある』と気づきやすくなる。そう考えると、木原選手が弱さを見せられたこと自体が、三浦選手の支えを受け取る一つのきっかけになったのではないかと思います」

鈴木「私も素直であることはアスリートに重要だと思います。特にアスリートの場合、メディアの前では強く見せなきゃいけないとか、『見せたい自分』があるものです。だけど、ミスをすれば人間として落ち込むのは当然です。『アスリートは常に強くなければならない』という固定観念は、間違っていると思います。それに、あれだけ素直に感情を出している姿を見て、周囲の人も心を動かされた。

 今回の出来事は、自分の弱さやできなかったことを認めて前に進むことが、成長のプロセスにおいてどれだけ大事かを証明していたと思います。SPの失敗から、フリーであれだけのパーフェクトな演技をして世界新記録と金メダルを獲ったことは、失敗からのリカバリーにとどまらず、『進化』へとつなげた理想的な姿です」

小塩「今、三浦選手は24歳ですよね。脳のなかでも、感情を落ち着かせたり、状況を少し引いた視点で捉えたりする働きに関わる前頭前野は、思春期から若年成人期の12~25歳頃にかけて発達していくとされています。もちろん、そうしたことは年齢だけで一律に決まるわけではありませんが、三浦選手は経験を重ねるなかで、自分の気持ちだけでなく、パートナーの状態も見ながら支えられる力が、より自然に発揮できるようになっていたのかもしれません」

鈴木「それは大変興味深いお話です。そういえば璃来ちゃんも試合後のインタビューで、『以前の私だとここまで強くなれなかった』と言っていましたが、実は経験値の積み重ねだけでなく、脳の成熟も関係しているのかもしれないんですね」

小塩「そうですね。同じ6年半一緒に過ごしていたとしても、もしもっと若い時期だったら、ここまで落ち着いて同じように支えることは簡単でなかったかもしれません。相手がどんな状況にあって、どんな言葉なら届きやすいのかを見極める力は、やはり経験とともに少しずつ育っていくものだと思います。そうした成長の積み重ねが、今回の逆転劇の場面で自然に表れたのかもしれません」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。人物インタビュー、ヘルスケア、ダイエット、トレーニングの分野を軸に、雑誌、書籍等で編集・執筆を行う。担当書籍に『すごい股関節』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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