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「明日はクビ」の不安は人を伸ばすか、潰すか 戦力外→NPBで再生…元助っ人2人に見る“競争”の功罪

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「アメリカの競争は子どもを伸ばすか」。

日本ハム時代のニック・マルティネス(左)とDeNA時代のアンソニー・ケイ【写真:産経新聞社】
日本ハム時代のニック・マルティネス(左)とDeNA時代のアンソニー・ケイ【写真:産経新聞社】

「Sports From USA」――今回は「アメリカの競争は子どもを伸ばすか」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「アメリカの競争は子どもを伸ばすか」。

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 アメリカ人は競争を重んじる。アメリカ合衆国情報庁で異文化理解の研修を行っていたロバート・コール氏は1984年に「アメリカ人の価値観」を発表し、アメリカ人が重んじる13の価値観を挙げた。「自助精神」、「未来志向」、「物質主義と所有欲」とともに「競争」が入っている。コール氏は「アメリカ人は競争こそが個人の最高の能力を引き出すと信じている。競争は、一人ひとりに挑戦を突きつけ、人間として可能な限り最高の成果を生み出すよう促すものだと彼らは主張する」とし、「アメリカの家庭や教室、さらには最も幼い年齢層においてさえ、競争が奨励されているのを目にするだろう」と述べている。

 こうした価値観は、アメリカのユーススポーツにも色濃く表れている。チームとして試合で勝つことだけではない。毎年、チームを決めるためのトライアウトで決められた人数の枠を競う。大学のスカウトが見に来るショーケース大会で他の選手よりも優れていることをアピールする。枠を勝ち取るための競争も、子どもたちの力を伸ばすと考えられている。

 それはプロスポーツでも同じことで、当然ながらより厳しい競争がある。メジャーリーグの各球団は、NPBの各球団よりも、選手の入れ替わりが激しい。シーズン中であっても、メジャー契約の40人枠から外されるDFA(Designated for Assignment)になることもあるし、ウェーバーにかけられ、他球団に獲得の機会を与える手続きを取ることもある。つまり、シーズン中であっても、勝利に貢献できないと判断されれば、チームを去らなければいけない。

 しかし、決められた数の枠を争い、明日はクビになるかもしれない、どこに行くかわからないという日々が続くと、競うことによって自分の力を伸ばすことに集中するのではなく、不安定さに疲弊してしまうのではないか。わたしはそのように考えて、メジャーリーグで安定した立場を獲得することができず、NPBに仕事を求め、そしてMLBに復帰した2人の投手に聞いてみた。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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