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左手は確かに触れていた――橋本大輝の落下、勝者と敗者を分けた“残酷な数センチ”【フォトコラム】

体操の世界選手権(10月・オランダ)代表選考を兼ねたNHK杯(東京体育館)は17日、全日本の得点を持ち越した男子の最終日が行われ、2021年東京五輪2冠・橋本大輝(日本生命/セントラルスポーツ)は首位で迎えた最終種目・鉄棒でまさかの落下。3年ぶりの優勝を逃した。そのシーンに、体操の繊細さを痛感させられた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

最終種目の鉄棒、離れ技で左手があと数センチ届かず落下した橋本大輝【写真:中戸川知世】
最終種目の鉄棒、離れ技で左手があと数センチ届かず落下した橋本大輝【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム

 体操の世界選手権(10月・オランダ)代表選考を兼ねたNHK杯(東京体育館)は17日、全日本の得点を持ち越した男子の最終日が行われ、2021年東京五輪2冠・橋本大輝(日本生命/セントラルスポーツ)は首位で迎えた最終種目・鉄棒でまさかの落下。3年ぶりの優勝を逃した。そのシーンに、体操の繊細さを痛感させられた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

 あと数センチ、左手が届かなかった。

 2位の岡慎之助と0.147点差の首位で迎えた最終種目の最終演技者。会場全体が橋本に注目する中で「まさか」が起きた。演技中盤の離れ技、左手がバーを掴み切れず。落ちていく体をファインダー越しに咄嗟に追いかけた。

 直後に耳に響いた、悲鳴にも似たどよめき。体ごとマットに叩きつけられた橋本は突っ伏したまま、3秒ほど動けず。粉が舞っているのは分かったので片手は触れたと思っていたが、撮った写真を見返してみると、左手もバーを捉えていた。

 結果的にこの落下が、1位と2位を、勝者と敗者を分けた。

鉄棒の演技終了直後、失意の中でも観客に両手を合わせた橋本【写真:中戸川知世】
鉄棒の演技終了直後、失意の中でも観客に両手を合わせた橋本【写真:中戸川知世】

 逆転で3年ぶりVを逃した橋本は試合後、「結構ギリギリを狙っていたので、車輪が速くなって、勢いを止めずにそのまま(直前の離れ技の)リューキンに入ってしまった。離した瞬間に低い軌道が見えていたので、『ああ、落ちちゃったな』と」と振り返った。

 撮影しているだけでも気が張り詰める6種目の演技が続く一日。この数センチが落下、1点の減点に繋がり、勝敗に直結する。まして岡との五輪王者同士の頂上決戦。大きなミスを一つもできない重圧の中で、極限の繊細さを求められる体操の難しさを痛感した。

 演技終了後は、天を仰ぎ呆然とした表情だった橋本。ただ、悔しさだけで終わらないのが体操ニッポンのエースたるゆえんだ。

岡に逆転を許すもこの日5位に入った角皆友晴と談笑する橋本(左)【写真:中戸川知世】
岡に逆転を許すもこの日5位に入った角皆友晴と談笑する橋本(左)【写真:中戸川知世】

 応援に駆けつけたスタンドの観客に手を挙げ、両手を合わせて感謝とお詫びを表現した。終了後は声をかけにきた別グループの5位・角皆友晴とおどけた表情を見せながら談笑。フロアを明るく照らす橋本の人間性も見えた。

(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)

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