5歳で死別、父はW杯3大会の怪物FW 愛された「万吉」のDNAとラグビー人生…ただ一つ、真逆だった才能――東海大・渡邊拓斗

“新米PR”の成長を加速させたこの冬の1か月
3年生だった昨季は準公式戦の関東大学春季交流大会でメンバー入りもしたが、本人のPR転向の思いは強かった。木村監督の証言だ。
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「入学当時は、走り方でもドタドタした感じだったし、いろいろ改善していかないと、どのポジションでもウチでは難しい印象でした。だからしっかりとウェートトレーニングや基本スキルを出来るように時間を費やしてきたんです。どうやって体を大きくするかというトレーニングのやり方も知らなかったから。でも、接点ではガツガツやるところはあった。だから、そこを伸ばしていけばいいよとも話していたんですが、本人はおそらく上のレベルではLOでは難しいと思っていたはずです。なので、3年のシーズン途中で、PRでスクラムを組みたいと自分から言ってきたんです」
木村監督はじめコーチ陣の中では“一軍半”近くまで来ていたLOを兼務しながら、将来を見越してPRの練習を続ければいいという程度で考えていたが、拓斗はPRとしての経験値を上げることに専念することを求めた。
「たぶんLOとしてこのままやっても限界あると思っていました。僕のサイズならどこにでもいましたから。レベルが高いのは分かっていますが、出来ればリーグワンでプレーしたいという気持ちもあった。そう考えたときに、やはりフロントローがいいんじゃないかと考えていたんです。ただしリーグワンを目標とするには、しっかりした技術、能力を、そのレベルに上げていく必要がありました」
PRの重要な仕事であるスクラムの練習は、実は他のポジション以上の難しさがある。3対3や8対8でスクラムを組み込んで経験値を上げる必要があったが、そのためには本人以外に5人、15人と相手が必要になる。拓斗がチームのメニュー以外の「エクストラ」の鍛錬で経験値を埋め合わせるのは容易なことではないのだ。秋のシーズンは、スクラムを組むために必要な筋力の強化や、スクラムの姿勢といった基礎メニューを続けてきた。本人は「1年上のPRの先輩方が本当によく教えてくれて、今でもいつでも聞いて来いよとアドバイスをしてくれる」と話すが、シーズンも終盤になると、どうしても主力メンバー中心の練習に変わっていく。その中で、木村監督が拓斗にこんな提案をした。
「拓斗は、2月のチームのオフ期間も練習したいというんです。勿論チームは動いていない。多くの部員は実家に戻るなど寮にも不在になる。なのでダメモトで、ちょっと東芝(BL東京)に相談しようと考えたんです。薫田(真広)社長に、万吉というレジェンドの息子だから練習参加できないかと投げたんです。そうしたら現場サイドも受け入れてくれた。で、オフ返上で2月の1か月間ずっと東芝に通っていたんです」
薫田社長は、現役時代はHOとして日本代表主将を務め、監督としても東芝の最強時代を築いたレジェンドだ。現役時代、指導者としても万吉と共に闘い、辛い別れも経験していただけに、拓斗にも快く胸を貸してくれた。そんな周囲の厚い支えが、拓斗の成長を加速させている。
「2月中のオフをただ休みに使うよりも行ったほうがいいと思いました。実際参加してみると、大学とは全く違う世界でした。ラグビー、スクラムを極めている人たちばかり。得られたものも大きかった。スクラムを組む機会はそこまで多くはなかったが、それでもリーグワンレベルの強さを実感させられたし、足りてない部分、どこを改善したらいいかと細かいところまで知ることが出来ました。スクラムだけじゃなくてフィールドプレーでも、一つ一つ誰が何を意識しているかも教えてもらいました。大学じゃ学べないことも多かった。ずっと、こういう所でチャレンジしたいと感じた環境でした」
BL東京での1か月は、乾いた土地が水分を一気に吸い込むように拓斗の成長を後押しした。リーグワンに挑戦したいという思いは、出稽古前よりも高まった。チームに戻って来たこの“新米PR”を、木村監督はこう評価する。
「すごく刺激を受けて帰って来ましたね。彼にとっては最高の時間だったと思います。ウチのOBの三上(正貴、元日本代表PR)や他の選手たちが丁寧に教えてくれたという。戻って来てスクラム組み込むと、だいぶ良くなってきたと感じます。以前不安定だった組む姿勢も、いまは組んだ時からバチっと決められるようになってきた」
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