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わずか1年で3チームが休部&規模縮小 新リーグ創設の日本ラグビーが直面する課題

「降格」のイメージが活動休止に影響したか

 この“準備段階”とも考えられるフェーズ1がスタートした早々に決定された宗像Bの活動休止だが、サニックス・曽我経営企画部長の会見の中に、注視すべきコメントがあった。

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「チームを持つ以上はディビジョン2、1を狙っていかなければいけない。その中で、どこまで投資をするかも議論の中心にありました。現状ですでにディビジョン1などの上の方にいれば、もう少し違った考え方もあったかもしれません」

 もしチームがディビジョン1だったら、この休部という判断が変わっていた可能性を否定しなかった。つまり、新リーグの発足に伴い3部リーグに落とされたことが、サニックス側の活動休止の判断に影響した可能性があるということだ。リーグ側の審査に見合わなければ下部ディビジョンに落ちることは、事前に参入希望チームにも説明されていた。それでも実際に3部となれば、企業内の風向きも変わるのだという現実を、このコメントから読み取ることができる。このような判断は、おそらくサニックス1社に特有なものではないだろう。どのチームも“明日は我が身”なのだ。

 このようなリスクを少しでも回避するためには、新リーグは「落ちる」のではなく、「昇格する」というイメージを準備する必要があったのではないか。

「降格」というイメージを持たせないアイデアは、海外主要リーグの改編では見て取れるものだ。南半球のスーパーラグビーも、ニュージーランドで続く「NPC(ニュージーランド州代表選手権)」や南アフリカ伝統の地域代表選手権「カリーカップ」を2部化するのではなく、現行の国内最高峰リーグの上に、新たに国を跨いだ最上級リーグを“上乗せする”というイメージで立ち上げられた。イングランドの最上級リーグ「プレミアシップ」も、RFUチャンピオンシップ、イングランドナショナルリーグの上に立つシステムを作り出している。

 現実的には、これらは「見た目」「見せ方」の問題で、NPCやRFUチャンピオンシップも実質上2部のような位置づけと見なされている。それでもファンはもちろん、チームを支援するスポンサー企業らに、少しでもポジティブなイメージを植えつけたいという配慮がある。

 一方で、日本では昨季までのトップリーグの上にできた最上級リーグに昇格する、もしくは公式戦期間限定で編成されるスーパーチームによるリーグが上乗せされるという「見せ方」をできなかったことが残念だ。たとえ見せ方に過ぎなくても、チームを保有する企業に、「降格」ではないという納得材料、説得材料を提示して、チームの廃部、強化縮小をなんとか阻止、回避しようという配慮を、協会、リーグ側に求めるのは要求が高すぎることだろうか。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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