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わずか1年で3チームが休部&規模縮小 新リーグ創設の日本ラグビーが直面する課題

チーム譲渡の動きは難航、事実上の廃部か

 江東BSに40-38と競り勝ち、ホームのファンへの挨拶を終えて会見に臨んだ松園正隆監督は、複雑な心境に目尻の涙を拭った。

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「試合までいい準備をして、最後の最後でなんとかホームで勝てて勝利を収めることができたことは、頑張ってくれた選手を誇らしく思います。1か月前くらいに、こういうふうに検討されているという話が出たので、選手は多少なりとも心の準備はしていたと思います。発表があってからは、まずラグビーができることに感謝すること、応援していただける人がいることに感謝して楽しむことにフォーカスしていこうという話をして、今日の試合に臨みました」

 サニックスでは、チームの譲渡も含めて今後の対応を考えている。現状では「スポンサーをしたいという話が多く、チームを買い取る話までは進んでいない。具体的な交渉の目処は立っていない」(曽我経営企画部長)とチーム全体の移譲は難航している。譲渡ができなければ、プレー続行を希望する選手には移籍先探しをチーム、企業としてサポートしていくことになる。

 日本で、いわゆる企業スポーツとして発展してきた社会人ラグビーは、トヨタ自動車、東芝などの大企業がチームを保有してきた。ラグビー部の廃部、強化縮小はワールド、日新製鋼など過去にもあったが、ほとんどのチーム、選手はラグビーができなくなるという不安など感じずに強化に打ち込んできた。それが、プロ化に大きく踏み込んだ新リーグの発足と前後して、3チームの“後退”という事態となっている。

 割り切って考えれば、プロ化という荒療治の副作用、淘汰という解釈もできる。だが、別の側面から見ると、日本でラグビーが置かれた“立ち位置”も見えてくる。

「プロ化」という方向性はリーグ側も公言している一方で、現実的には参入チームはいまだに企業スポーツという形態での運営が続いている。今回のサニックスやコカ・コーラのように、1つの親会社の判断でチームの存亡が左右される状況を回避するためにも、プロ化を推進する声があった。だが、軌道に乗るどころか、それ以前の予想以上に早い段階で強化の見直しを決める企業が続いている。派手に「リーグワン」という大型ロケットを打ち上げたが、機体を構成する主要な部品の10%ほどが、発射の爆風に耐えられず、衛星軌道に乗る前に吹き飛ばされてしまったような印象だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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