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わずか1年で3チームが休部&規模縮小 新リーグ創設の日本ラグビーが直面する課題

チーム運営費の負担が重いラグビーの宿命

 もちろん、企業の経営面での判断は止むを得ない部分もある。NTTグループ2チームの再編は、今年1月にNTTドコモがNTTコミュニケーションズを100%の子会社化したことが1つの転機になっている。3月16日のリリースでは従来の2チーム(SA浦安、RH大阪)を、ドコモ、コミュニケーションズ、NTT本社が出資する運営会社がSA浦安を母体としたチームを保有し、ドコモは社員ベースのチームになる。所属リーグは4月中にリーグワンが審議、決定するが、現時点ではディビジョン3入りする方向だ。

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 ラグビーチームの運営は採算性を考えると、幅を占める人件費をはじめ、試合数などさまざまなハードルがあるのは間違いない。リーグワンの東海林一専務理事も、NTTグループのチーム再編に伴い「15人制ラグビーの場合は、今の興行収入に比べてチーム運営費の負担が重いという宿命がある。そうした中でどうやって、様々な財務的なチャレンジに対応していくかは、リーグとチームが共に作っていかなければいけない」と語っている。

 採算ベースで現状を見れば、チームは企業のお荷物という解釈もできる。チーム運営を1企業に依存すれば、今回のような判断が起こる可能性があり、プロ化に急速に舵を切れば、運営に必要な支援が十分に得られない危険がある。いわば稜線を歩くようなものだ。だからこそ、企業スポーツからの脱却、プロ化という挑戦は、慎重に策を講じて舵を取っていく必要がある。ロケットの空中分解を避けるために。

 日本ラグビーのプロ化というテーマは、10年以上前からさまざまな形で議論されてきた。その中で、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会へ向けて協会でも機運が高まり、22年のリーグワン誕生に繋がっている。このような経緯の中で取材を続けて感じていたのは、かなり無理をしてでも新リーグ立ち上げを急ごうとする鼻息の荒さだ。

 この性急さには理由がある。19年W杯開幕前からラグビー界、協会内にはこの世界規模の大会による日本国内でのラグビーの盛り上がり、熱量を最大限に生かしたいという空気感が強くあった。つまり、ラグビーの関心度がマックスな状態の中で、ファンの獲得を促進させ、ラグビーに関わる企業、つまりスポンサーの獲得も図る。その具体的な施策が、プロ化を踏まえた新リーグの設立だった。

 もちろん、新たな取り組みが1年遅れるごとに、その熱量も冷めていくことは間違いない。鉄は熱いうちに打ちたい。その結果、W杯直後の2020-21年シーズンの発足は難しくても、21-22年シーズンには是が非でも開幕する目標が打ち出され、22年1月に新リーグのキックオフが掲げられることになった。開幕ありきのカレンダーが進んでいたのだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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