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わずか1年で3チームが休部&規模縮小 新リーグ創設の日本ラグビーが直面する課題

サニックスの厳しい経営状態が影響

 サニックスが今季限りでのチームの活動休止を発表したのは、江東BS戦の4日前のことだった。サニックス執行役員の曽我拓・企画本部経営企画部長は、事実上の廃部に至った経緯をこう説明した。

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「他社に比べて事業規模も小さい中で、限られた利益の中でラグビー活動をやらせていただいてきました。これまで28年間活動している中で経営状態としてきつい時もありましたが、特に今度は当社が事業としてやっているエネルギーまわりのところで、経営としては不安定な状況に陥り、苦渋の決断ではありますが、プロのカテゴリーでやっていくのは諦めようという決断をした次第です」

 サニックスは、電力卸価格の高騰などにより厳しい経営状態が続いている。すでにチームの強化見直しの可能性が報じられていたため、正式決定はサプライズではなかったが、チームがリーグ戦終盤の熱戦を繰り広げる最中の発表に、戸惑いを感じた人も少なくなかっただろう。このタイミングでの発表は、同日に行われたサニックスの取締役会での決定を受けて、より早い段階でチームはもとよりファンにも知らせようという判断もあった。同時に、リーグワンに設けられた選手の移籍に関する「60日ルール」を踏まえて、公式戦最終日となる5月29日から60日前の3月30日から移籍交渉を可能にするための配慮もあった。

 関東、関西の伝統チームに抗うように、福岡を拠点とするサニックスがラグビー部を立ち上げたのは1994年のこと。創業者の故・宗政伸一氏のラグビーへの強い情熱が創部の大きな原動力となった。九州では福岡を中心にラグビースクールや高校ラグビーが盛んな一方で、社会人レベルでは長らく“一強”時代を築いてきた九州電力の不振もあり、低迷が続いていた。

 新たに誕生したこの若いチームには、九州でのラグビー盛り上げへの大きな追い風としての期待は大きかった。現役ニュージーランド代表だったジェイミー・ジョセフを招いたことが、現在の日本代表ヘッドコーチ(HC)就任への道筋となり、HC擁立時には難航する契約交渉を後押しするなど、日本ラグビー界で果たしてきた功績は大きい。2003年に発足したリーグワンの前身トップリーグのオリジナルメンバーでもある。

 サニックスが2000年から始めた高校世代の国際大会「サニックス・ワールドラグビーユース交流大会」は、会見でも存続の見通しが示されたが、世界規模での普及・育成にもかけがえのない貢献をしてきたラグビー界の財産だ。個人的な思い入れだが、宗像Bの練習グラウンドから防風林を抜けるとわずか数十秒で雄大な海が見渡せる神湊の浜辺、そしてサーフボードが立てかけられるクラブハウスという環境は、日本にとどまらず世界でも稀有なラグビーパラダイスでもある。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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