大学女子駅伝日本一の裏に“走れない主将” 前日に涙のスピーチ「走るのは6人だけど…」最後にまた滲んだ秋の空――名城大・瀬木彩花

「彩花先輩のために」仲間は苦しい時に思い出した
結果は2時間2分21秒。従来の大会記録を42秒更新し、まさに圧勝だった。優勝後、選手たちは喜びと同時に、口をそろえて瀬木彩花の名前を挙げた。今年の名城大が「瀬木」のチームという何よりの証明だった。
2区で区間新記録を樹立し、チームをトップに押し上げた近藤希美(3年)は「自分がメンバーで走る以上、へたな走りはできない。簡単に諦めてはいけない。苦しい時に、彩花先輩の事を思い返して粘ることができました」と話した。
4区で区間3位だった村岡美玖(4年)も「私は苦しい走りになってしまったのですけど、絶対に優勝したい。走れなかった彩花の分も、ちゃんと走らないといけない。その思い、応援を力にして走ることができました」と振り返った。
アンカー6区で区間賞を獲得した橋本和叶(2年)は「絶対優勝する。彩花先輩を胴上げする。そのチームみんなの思いが詰まったタスキをトップで競技場に持ってくるという思いで、最後まで粘り強く走れたと思います」と言った。
後半の苦しい時、仲間たちが真っ先に思い浮かべたのは主将の顔だった。杜の都を駆け抜けた6人の胸には、走れなかった瀬木の思いがあった。
アンカーの橋本が歓喜のフィニッシュテープを切ると、瀬木はすぐに橋本と抱き合った。歓喜の輪ができると、体は仲間の手で宙に舞った。約束の胴上げだ。近づく空は、また涙でにじんだ。日本一の輪の中心には、走れなかった4年生がいた。
「不安の中でやってきたけど、チームのみんなが『胴上げしたい』『勝ちたい』『きつくなったら彩花の顔を思い出すね』と言ってくれた。本当に嬉しかったですし、優勝で有言実行してくれた。本当に幸せだな、ちょっと報われたのかなって思えます」。
自らタスキをつなげなかった悔しさが消えたわけではない。100%のうれし涙ではないかもしれない。でも仲間と一緒に見られたNo.1の景色は、胸いっぱいに最高だった。
次なる目標は12月30日の富士山女子駅伝だ。卒業後も陸上人生は続くが、今度こそ、自分も走ってチームを日本一に導きたい。最後に、こう誓った。
「走れなかったのは悔しいですけど、この経験ができたのは、名城にいたから。この経験を絶対、次に生かせるようにしたいです」
チームを束ねつつ、自らも生き残りを懸けた競争に挑む。最後の最後こそ心の奥底から笑ってやる。
(THE ANSWER編集部・上田 悠太 / Yuta Ueda)
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