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歴史的連覇の南アフリカに日本ラグビーが学ぶこと 4年後のW杯で再び世界を驚かすためのヒント

王者が決勝で仕掛けていたギャンブル的采配

 ニュージーランドがFLサム・ケイン主将のレッドカード(退場処分)により、50分以上を14人で戦ったことで「15対15なら」と思われる方もいるはずだ。確かに、フルメンバーでの戦いを見たかったという思いはあるが、ニュージーランドは決勝までの試合でもイエローカード(10分間の一時退場)4回、レッドカード1回を出している。イアン・フォスター・ヘッドコーチ(HC)は「あまり問題だとは思わない」と語っていたが、決勝戦ではさらにもう1枚のイエローカードも受けている。大一番でも致命的なミスを犯したのは、大きな検証材料になるだろう。

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 もう1つの「強み」であるスクラムは、公式データ上では南アフリカが11回のスクラムで10回成功、ニュージーランドは2回をすべて成功となっている。

 決勝戦では、スクラムが直接スコアに繋がるシーンはなかったが、前半34分の結果的に決勝点となったPGは、自陣でのスクラムを起点に敵陣に攻め込んだ末に決めるなど、戦略的な武器としての威力を見せた。4本のPGはすべて、相手が密集戦での重圧から反則を犯したもの。右足の射程50メートル以上の実績を持ち、今大会でキック成功率100%のSOハンドレ・ポラードの存在が大きかった。

 勝った南アフリカがトライなしの4PGで、1トライ、2PGのニュージーランドを下した決勝戦だったが、このチームは前回19年大会を除く3度の決勝でトライなしのPG、DGだけで勝っている。さらに驚かされるのが、今回の後半18分にニュージーランドにトライを奪われるまで、決勝戦では1度もゴールラインを越えさせていないのだ。4度の決勝戦の戦いぶりが、南アフリカラグビーの真髄をよく表している。

 そんな常勝チームでも、決勝戦では思い切った勝負に出ていた。2日前に発表されたメンバーでは、通常3人が選ばれるBKの控えメンバーがウィリー・ルルー1人という布陣を敷いてきた。控え8人のうち7人がFWというギャンブルで、オールブラックスの重圧を止め切り、スクラム、接点で重圧をかけて反則を奪うには、この布陣がベストと考えたからだろう。デクラークが負傷した場合は、7人制でSH(ポジション名はスイーパー)を経験するトライゲッターのWTBチェスリン・コルビが入るプランだったが、相当なリスク覚悟のメンバリングを決勝戦で打ってきたこと自体、ディフェンディングチャンピオンですら勝つことは容易ではない戦いだという現実を物語る。そしてゲームは、注文通りの展開となり、勝負が決まった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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