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歴史的連覇の南アフリカに日本ラグビーが学ぶこと 4年後のW杯で再び世界を驚かすためのヒント

「ティア2」勢が今大会で示した可能性

 同時に、今回の僅差の戦いの連続は、ラグビーの覇権争いという空間が急速に収斂していることも示している。

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 優勝候補筆頭とも言われたホスト国フランスがベスト4に届かず、決勝を戦った両雄はともにプール戦での敗戦を経て最高峰のステージに立った。南アフリカに激闘の末に土をつけたアイルランドは、再びベスト8の壁に阻まれた。前回の準優勝から3位に後退したイングランドだが、メンバーの平均年齢では8強チームで最も若い布陣で4年後への爪痕を残している。

 代表選手の選考規約の大幅な変更で南太平洋諸島の国々は飛躍的に選手層を増し、フィジーが「ティア(階層)1」、つまりW杯ベスト8常連クラスの強豪国以外で唯一の8強入りを遂げたのが、新たな兆しの第一歩になった。プール戦で大会を終えたが、そのフィジーからW杯初勝利を奪ったポルトガルの躍進は、試合結果だけではなく、その挑戦的なゲームスタイルも含めて称賛されるべきだろう。

 そして日本とも対戦したチリも、初体験の舞台で自分たちのラグビーを貫いた。アルゼンチンとの歴史的な南米チームによる初めての直接対決をW杯で実現した事実は、遅々とした一歩かもしれないが、ラグビーがワールドワイドなスポーツに進んでいることも示した。

 フィジーも含めた「ティア2」ネイションズの戦いぶりを見れば、格差があるとされるティア1との差は、埋めようがない海溝ではないことが分かる。強豪国との実戦を積み、経験値を伸ばせば、そう遠くない未来には日本が南アフリカを倒した2015年のような奇跡が起こるだろうと感じさせた。

 必要なのは、南アフリカに対しても、なんとか渡り合えるレベルのフィジカルと、世界の戦術的なトレンドを、どれだけの短い時間で自分たちも取り入れることができるかという情報のスピードの問題だろう。そこに、ティア1ネイションズとの経験を積み上げれば、ミラクルは現実になることを示唆した大会でもあった。

 目指す8強超えには及ばず帰国した日本代表も、この世界のサイクルの中で、どう自分たちの進化を加速させるかが4年後への勝負になるだろう。停滞すれば、同じティア2の仲間に追い上げられ、フィジーのように先行されるのは間違いない。

 ティア2国の強化という潮流は、日本を通過して、今は2031年大会の舞台となるアメリカへと向かっている。日本が参入の有力候補と言われている2026年に始まるネイションズ・チャンピオンシップ(仮称/世界トップ12か国による国際大会)のようなチャンスを抜かりなく掴んで、具体性のある強化環境を確実に作り上げていくことが重大なミッションになる。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)


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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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