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歴史的連覇の南アフリカに日本ラグビーが学ぶこと 4年後のW杯で再び世界を驚かすためのヒント

SHながらタックルを連発したデクラークの凄さ

 そのデュトイに負けないハードタックルを連発したのが、SHファフ・デクラークだ。こちらも横浜キヤノンイーグルスでお馴染みの選手だが、彼のポジションでは革命的なほどのタックルを見せる。デュトイとは対照的に172センチ、88キロのサイズは、日本人SHとも大きく変わらない。だが、タックルの強さはもちろんだが、防御シーンならどんな状況でも相手へのチャージを繰り返すその回数が驚異的だ。この試合で4位の15回を記録している。

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 元来、SHというポジションは、ボールをチームに供給するパス出しが重要な役割だ。そのため、パスに影響するような怪我や消耗を避けるために、フィジカルなプレーには加わらないのが常識だった。

 だが、デクラークのプレーを見ると、常にスクラムや密集の近くでプレーするポジションだからこそ、その密集から出たボールに最短距離でプレッシャーを掛けられる選手でもあることを示している。日本でも、大学などでFLの選手をSHの位置に立たせるなどの奇襲を考えたチームもあったが、世界最強チームの9番は、当たり前のプレーとして激しいタックルを連発し続けた。終了直前の後半38分にニュージーランドが猛追を仕掛けた局面でも、タックルこそ外されるも、直後に素早く防御に戻り、相手SHのキックをチャージして反撃の芽を摘むなどフルタイム働き続けた。

 公式記録での個人データを見ても、タックル回数は上位8人が勝者の選手だ。タックルの多さは防御が多い試合というネガティブな評価もできるが、今回の決勝を見る限り、アタック面で善戦したニュージーランドの攻撃機会を、最後まで集中力を切らさずに守り続けた南アフリカ選手を称える数値と考えていいだろう。

 データで見ると、80分間のうちどれだけボールがプレーされたかを示す「ボール・イン・プレー」は38分34秒。スピーディーな連続攻撃が武器の“オールブラックス”は、準決勝アルゼンチン戦で43分34秒という驚異的な数値を記録したが、南アフリカがなんとか封じ込んだ数字と評価できる。

 ラックからボールを展開するスピードでも、ニュージーランドはアイルランドとの準々決勝が平均4.10秒、準決勝アルゼンチン戦は3.41秒だったのに対して、決勝では5.05秒と早い球出しを阻まれるなど、随所に南アフリカの固い防御力を示す数値を読み取ることができる。

 22メートルライン内の、いわゆるデンジャラスゾーンへの侵入は南アフリカの「3」に対してニュージーランドは「8」と上回った。ゾーン内でのプレー時間も敗者が3倍近かったが、PGで加点して勝つ南アフリカにこの数値は意味がない。逆にこの地域で20回攻撃フェーズを作りながら1トライしか奪えなかったことが、ニュージーランドの敗因になってしまった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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