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歴史的連覇の南アフリカに日本ラグビーが学ぶこと 4年後のW杯で再び世界を驚かすためのヒント

日本でプレーするデュトイが残した圧倒的な数値

 そのための土台になるのが、自分たちが他のチームより優れているものは何かを明確にすることだったはずだ。

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 建国前から、この地域に積極的に入植したのはオランダ人だ。その後、南アフリカを支配するイングランド人よりもさらに大柄なオランダ系ボーア人の末裔たちの恩恵を、このチームは受けてきた。そのサイズ、パワーを自分たちのアドバンテージにしようというプレーが、決勝戦の勝因にもなった「ディフェンス」だった。そして勝ち上がる中では、「スクラム」も強力な武器だった。

 もちろんDNAでラグビーをするわけではない。今のチームは、主将のFLシヤ・コリシを筆頭に多くの選手がボーア人もやって来る前の先住民の血を引く。だが、19世紀末から140年以上に渡り積み上げられてきた南アフリカラグビーの深き伝統の中で、蓄積され、こだわり続け、一部は最新のテクノロジーとサイエンスで磨きをかけてきたこの2つのプレーは、いまだに圧倒的だ。

 W杯開幕後のコラムでも指摘してきたが、今大会の興味深い傾向として、地域支配や攻撃回数などの勝利の目安になってきたデータが高いチームが「敗者」になってきた。この傾向は決勝も変わらない。ニュージーランドは、チーム、個人双方で南アフリカを上回るデータが多かった。だが、その中で南アフリカのFLピーターステフ・デュトイの残した圧倒的な数値が、このチームの強さを象徴する。

 前回大会後の2019年ワールドラグビー年間最優秀選手にも選ばれ、日本のトヨタヴェルブリッツでも活躍するバックローは、150回ボールを持って攻めてきた相手に、1人で28回のタックルを浴びせてチームの世界一を支えた。このゲームでタックル回数2位だった同僚のHOデオン・フーリーの20回を大きく上回り、決勝トーナメント8試合でも最多となる驚異的な数字を大舞台でマークした。

 ニュージーランドが予想以上に攻撃チャンスを作ったことも、この接戦の要因だったが、後半37分には相手CTBジョーディー・バレットのスピードに乗ったライン攻撃を、FWのデュトイが一撃で倒すなど、この巨大な背中の7番が常に突き刺さり、密集に飛び込んでいた。200センチ、115キロの大きな体ながら、フルタイム動き続ける驚異的なワークレートが、この国の指導者が選手に何を求めて育てているかをよく示している。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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