世界Sバンタム級4団体統一戦

　ボクシングの世界スーパーバンタム級（55.3キロ以下）4団体統一戦12回戦が26日、東京・有明アリーナで行われ、WBC＆WBO王者・井上尚弥（大橋）がWBA＆IBF王者マーロン・タパレス（フィリピン）に10回1分2秒KO勝ち。男子では世界2人目、アジア人初の「2階級4団体統一」の歴史的偉業とともに、日本人最多タイの世界戦通算21勝も飾った。戦績は30歳の井上が26戦26勝（23KO）、31歳のタパレスが41戦37勝（19KO）4敗。

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　リングを支配し続けた完勝に客席は総立ちだった。井上は4回後半に左フックを着弾。ふらつかせ、ロープ際でのラッシュでダウンを奪った。中盤に顔が真っ赤に腫れ上がったタパレス。タフさを見せながら守勢を強める中、井上が攻め続けた。決着は10回。見事なワンツーを突き刺し、2度目のダウンを奪取。膝をついたタパレスは10カウントを取られ、モンスターのKO勝ちが決まった。

　スーパーバンタム級の世界戦線では、WBAはアフマダリエフが、WBCはルイス・ネリ（メキシコ）が指名挑戦権を保持。両者とも井上―タパレス戦の勝者との対戦を熱望していた。IBF、WBOはサム・グッドマン（豪州）が1位にいる。

　井上は10回を戦った直後とは思えない綺麗な顔で会見に出席し、陣営の大橋秀行会長、父・真吾トレーナーとともに試合を振り返った。会見の一問一答全文は以下の通り。

――2階級4団体統一はどんな感覚か。

井上「階級を上げて7月と今日と、2試合で4本を集められて達成感があるけど、自分の中で通過点と捉えていた一戦。嬉しさを噛み締めながら過ごして、次戦に向けて過ごしたい」

――タパレスについて。

井上「ディフェンスが優れていて、重心も後ろ重心。なかなかクリーンヒットを当てられず10回まで行きました。結果、こうしてKOで勝てて凄くよかった」

――どの辺りで手応えを。

井上「手応えは正直なかったけど、10回にタパレスが崩れ落ちた時にこんだけダメージが蓄積されていたんだという気持ち。やっぱりタパレスの頑張りというか、苦しい表情を見せないところ、そこまで読み取れなかった」

――来年はどんな戦いを。

井上「決められた試合を全力でやるだけ。そこは大橋会長にマッチメークを任せている。どんな戦いになるか楽しみに待ちたい」

――タパレスはディフェンスが優れていると。今まで映像を見てきて、いざリングに立っていて自身の事前のイメージと違うところは。

井上「過大評価していたのはタパレスの攻撃力。そこは自分が想定していた感じで進めていっていたんですけど、ディフェンス面は思ったより凄くて意外とパンチが当てられなかった。その感じで戦っていました」

――途中でタパレスを引き出す意図は。

井上「試合の中で駆け引きがある。ダウンを取っても攻めすぎず、出させたり、いろんな考えでやっていました」

――大橋会長、真吾氏に引退の見込みを「35歳から37歳にしたい」と話をしたと。経緯は。

「堅い話としてしたわけではないですけど。『自分のパフォーマンス次第では延長していいですか』と。立ち話程度ですよ。自分のパフォーマンスができればやりたい。年齢とともにいいパフォーマンスができないのであれば、35歳の前でも考えること。ボクシングというスポーツはダメージも溜まるし、危険なスポーツでもある。大橋会長と父と話していきたい。終わりの話を今するのはどうかなと（笑）。まあ、そういう話はやめましょう（笑）」

――タパレスにあそこまでダメージがあると思わなかった。10回で判定がよぎることは。

井上「よぎりましたね。ただ、ここまで優勢に進めていたし、何としてでも無理していってKOを狙えるほどボクシングは甘くない。冷静に進めようと思っていました」

――頭をつけあってボディーを打ち合うシーンはこれまであまり見たことがない。そういう戦いをどう感じたか。

井上「（ボディーの打ち合いは）今までそういった試合をしていなかっただけで、練習ではしていること。してみてどうこうという気持ちはなかったです」

――7、8回は柔軟なディフェンスをするタパレスの上（頭）に当てようとする意地を感じた。

井上「意地というか、突破口というか、タパレスをどう崩すか。軽いパンチでもクリーンヒットなら崩せると思っていた。やっていての感覚なので、意地というか、進め方というか」

――2階級4団体統一をリング上から見た景色は。

井上「1年前、皆さんに見せてもらった景色と似たような景色。自分が4本のベルトを肩にかけて終わった会場の雰囲気を見るのは感動的なもの。それを見せてくれたファンにも感謝を伝えたい。このベルトを今後どうするかも考えていきたいけど、この4本のベルトがどうなってもまた熱い試合を見せたい」

――大橋会長、今後の展望は。

大橋会長「まず2階級4団体統一を全部KO。今日の判定とKO勝ちは全く違う。KOで勝ったのは大きい。こういう状況でああいう試合ができるのは改めて凄いとあった。『タパレスに楽勝』という報道があったけど、我々には全くない。警戒した通りだった。今日は（井上の弟）拓真の誕生日。凄いプレゼントになった。本当に弟想いの兄だった。以上です」

――真吾トレーナー、感想を。

真吾トレーナー「ホッとしています。最新のビデオを見ると、タパレスに技術があると再確認できた。インターバルに『パンチが当てづらい』と尚弥が言っていた。自分からは『カウンター、打ち終わりとか、慌てなくていいからコツコツとダメージを与えればいい』と話していた。思ったよりディフェンスがいいというのがありましたね」