陽岱鋼、引退試合で陥った大ピンチ「取り返したくて…」 21年のプロ生活、最後に見つけた宝物「とても意味があるんです」

引退試合に集った仲間たち…最後はファンと「サンキューでーす」
「ショートを守ってたのも見ているけど、当時はプロ野球っていう世界の壁に当たりまくっているように見えた。覚悟を持って台湾から来たから、乗り越えられたんだと思うよ。僕なら絶対無理」と笑う。送球難もあって、やり場のない鬱憤を抱えていた陽に、新たな道を開いたのが外野へのコンバート。だからこの日のお願いにも、全く異論はなかった。
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外野へ回ってからの陽はのびのびプレーし、ゴールデングラブ賞を4度も受賞する名手に育つ。そんな姿に憧れた一人が、ロッテのベンチ前でセレモニーを見届けた岡だ。
明大時代の岡は投打二刀流として話題をさらったが、2014年の日本ハム入りと同時に外野に専念した。当時の陽はバリバリのスター選手。「僕はプロで初めて外野をやったようなものでしたからね。憧れですよ。本当に」。打っても守っても、無駄のない動きに驚かされた。広い札幌ドームでも逆方向に打球が伸び、右中間スタンドにあった風船に当てている印象が強いという。
ポジションを争う相手でもあったはずだが「勝たなきゃというんじゃなく、一緒にプレーしたいと思う選手でした。スターなんですよ、そういうところも。引き込まれるというか」。試合で右翼を守るようになると、中堅の陽から細かくポジション指示が飛んできた。「本当に守りやすいんです。びっくりするくらいに」。
注意されたこともある。「ノックの打球をなんとなく捕っていたんです。それを見抜かれたんですよ」。常にグラブの芯で取った方がいいとアドバイスされたのを、今でも覚えている。岡は高い身体能力を活かし、ロッテ移籍後は外野の一角を占め、好守で鳴らした。そのベースにあったのが陽の教え。ファンを喜ばせるド派手なプレーの裏で、細かい部分を詰める選手でもあったのだ。
まるで同窓会のようなセレモニーを終えた陽は「もう、選手ではなくなるんですよね」とさすがに感慨深げ。そこで聞いた。「陽岱鋼が21年間かけて得たものは、何だろう?」と。
陽は「僕が得たもの、ですか……。いい質問ですね」と口にすると、しばしの思案ののち「仲間かな。いい時も悪い時も、いつも一緒にいてくれた仲間。人間だから好き嫌いはありますよ。でも同じ目標に向けて、力を合わせてやっていくのは、僕にとってとても意味があることなんです」と続けた。
ミスを取り返すチャンスをくれたオイシックスの仲間と、プロとしてともに歩んできた仲間に見送られて終えたプロ野球人生。陽はセレモニーの最後に、自らの決めゼリフ「サンキューでーす」を場内のファンと、声を揃えて絶叫した。「下からスタンドを見上げるのって、すごい景色なんですよ。でももう見られないんですよね」。苦しい時も陽の背中を押し続けたファンもまた、陽の「仲間」だった。21年という長い時間の末に、陽のプロ野球人生は大きな果実をつけて、終焉を迎えた。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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