ラグビー日本代表、56失点惨敗の検証 善戦→1週間で激変のなぜ…2m級大型化で“足りぬ存在”が浮き彫り
進む2m級の大型化、足りない「リンクプレーヤー」の存在
こんな地味な仕事が、日本の攻撃チャンスを摘み取り、遂行力を低下させていたのが、このワンサイドゲームの肝のプレーでもあった。途中出場したフレイザー・マクライトも同じタイプのFLとして日本のチャンスを寸断するジャッカルを披露していたが、では日本代表のティッツァーノは誰か。過去には姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)がジャッカルで名を馳せたが、この試合で7番を背負ったのはティアナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ)であり、今季を見ると下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)が務めるケースが多いポジションだ。確かにワークレート、積極的なタックルと、オープンサイドの資質は持ち合わせている選手たちだが、ボールに執拗に絡みつき、黙々とタックルをし続けるエキスパートというキャラクターとは微妙に異なる。ティッツァーノのプレーを観て日本代表でピッチに立つ15人に足りないと感じるのは、アタックでボールを繋ぎ、防御では相手に繋がせないプレーをする「リンクプレーヤー」の存在だ。
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このような“仕事人タイプ”の選手は、日本代表の中では常にボーダーラインに立たされ、その大方は一時期代表チームに呼ばれても、W杯への終盤のポジション争いでは脱落してきた。歴代監督、HCも常にこのような仕事人の存在を気にしながら、最終的には「サイズ」への魅力が優先された印象だ。世界最高峰の舞台で結果を出すには、リスクのある小兵選手よりも計算出来るサイズのある選手を選んできたのは間違いない。
現在の代表も「超速」という標語を抱えながら、やはり大型化しているのは明らかだ。この試合も含めて、すでにLOでは相手を上回る身長2m台を3枚揃え、今回の遠征メンバー中の第3列要員も7人中4人が190cm台、残る3人も187cm以上だ。この大型化が、日本代表をフィジカル面で世界のトップ10クラスにも挑めるレベルに押し上げた大きな理由でもある。だが、同時に大型化を推進することで、そのサイズに恵まれ、ボールキャリーに強みを持つような「ランナー」に、テンポのある所謂“生きたボール”を供給する役割の選手、つまりそれこそがリンクプレーヤーだが、その存在が希薄に思えてならない。
再びワーナーの言葉を借りれば「自分たちの攻撃もスローボールにされてしまった」「モメンタムを出せなかった」というコメントを聞いても、そこに体は小さくても、いやむしろ小さく機動力があるからこそ、接点により早く辿り着き、低さを生かしてボールに絡みつき、相手の防御、攻撃に楔を打つような選手がいてもいいと感じさせられた。
繰り返しにはなるが、当然、世界規格のサイズがない選手を使うリスクはあるだろう。ティッツァーノもゴール前防御での1対1の状況から日本のCTBディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)に突破されてトライを許している。そのリスクを踏まえた上で、リンクプレーのエキスパートのような選手をメンバーに選ぶのかは、様々な状況を加味した上でHCが担う特権事項でもある。
それでも、2020年代の日本のラグビーは、誰もが口を揃えるように海外トップクラスの逸材が集まり、その選手と毎週戦うことで日本生まれの選手も進化が促されている時代だ。世界クラスのパワーにも抗える選手は着実に増えてきているのもポジティブな現実だ。オープンサイドの選手をみても、末永健雄(S東京ベイ)、佐々木剛(BL東京)、若手ながら森山海宇(みう)オスティン(浦安DR)ら、ブレークダウンでのボール争奪、タックルで日本のティッツァーノとしての資質を秘めた才能は間違いなくいる。
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