[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

「10代の楽しい記憶」がエネルギーになる スケートに人生を懸けた高木美帆が中高生に伝えたいこと

2018年平昌五輪の女子団体パシュートで金メダルを獲得した【写真:アフロ】
2018年平昌五輪の女子団体パシュートで金メダルを獲得した【写真:アフロ】

高校3年間を満喫できたから、平昌五輪に向かっていけた

《思春期に入る中学、高校時代は親に対する反抗期にもあたる。競技に勉学に充実した日々を送る高木さんも通った道だった》

【注目】「この体重でも跳べるんだ」 月経異常や骨密度低下を経験、引退後に気づいた数字に縛られない体作り(W-ANS ACADEMYへ)

 反抗期はしっかりありましたね。父に対して強かったと思います。別に口答えするほうではないんですよ。むしろ何か言われても反応しないとか、そっち系ですね。高校には自転車で通っていましたが、雨や雪になると父に車で送迎してもらっていました。

 仕事の時間をずらしてもらったりしていましたし、母からは「父に対する敬意を持ちなさい」とは常々言われていました。反抗期の真っ只中ではありましたが、送迎してもらったら「ありがとう」と小さい声で、それも早口で伝えていました。聞こえていたかどうかは分かりませんが(笑)。

《思春期にある10代は感受性が高くなる時期とも言われている。誰かの言葉が心に響いて、その後の人生に活きることもある。高木さんも例外ではなかった。スピードスケートでも人間的にもグングンと成長していき、高校2、3年時には世界ジュニア選手権で総合2連覇を果たしている》

 10代の時に影響を受けた言葉は、私にもあります。ジュニアの日本代表に選ばれて海外遠征に行った時のこと。派遣された他校のコーチから、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」と言われたことがすごく印象に残っています。スケートの成績が上がっていったとしても、人は常に謙虚でなければならないということ。確かにそうだなって思ったことを覚えています。

 ただスケート的に言うと、「頭を垂れる」と滑る姿勢としては良くないんですよね。私も考えすぎてしまうと、自然と頭を下げてしまうことがありました。これはことわざではないのですが、(同じコーチから)「頭でっかちになるな、心で滑れ」とも言われたことがあって。おかげであまり考えすぎないようになって、自分の感覚を大切にできるようになったことも私にとっては大きかったと思います。

高校3年間を満喫できたことが五輪へ向かうエネルギーになったと明かした【写真:松橋晶子】
高校3年間を満喫できたことが五輪へ向かうエネルギーになったと明かした【写真:松橋晶子】

 高校3年間はスケートも頑張りましたけど、たくさん遊んだし、勉強も含めて学校生活を頑張れました。いろんな思い出をみんなと共有できました。大学1年の時、ソチ五輪の選考会で結果が出なくて大会に行けなかった後、自分の人生をスケートに懸けようと覚悟を決めました。それにはかなりのエネルギーが必要でしたが、若い時の青春というか、10代の楽しかった記憶が私のエネルギーになりました。高校3年間を満喫できたから、エネルギー切れを起こすことなく、次の平昌五輪に向かっていけたんです。

 中高生の時期は、その時にしかできないことがある。きっと自分自身が思っているより、10代はできることがたくさんあって、興味や関心さえあれば、10代ならではの熱量も体力もあるから、何でもやれると思うんです。(10代へのメッセージとして)もし私の経験で語るなら、中高生の時期しかできないことを、しっかり味わってほしいですね。そうすればその後の人生のどこかで、頑張れるエネルギーになるはず。私はそう実感したし、私にとって大切で、必要なエネルギーでもありました。

(16日掲載の後編へ続く)

■高木 美帆 / Miho Takagi

 1994年5月22日、北海道中川郡幕別町生まれ。幼少期から様々なスポーツに親しむなか、5歳から始めたスピードスケートで頭角を現すと、中学2年だった2009年2月のジュニアW杯で優勝。その後、国内代表選考会を勝ち抜き、翌10年バンクーバー五輪に日本スピードスケート史上最年少の15歳で出場を果たす。帯広南商高、日本体育大でも実績を積み上げたが、14年ソチ五輪代表選考会で敗れて落選。その悔しさを糧にオールラウンダーとして飛躍を果たすと、18年平昌五輪で3つ、22年北京五輪で4つのメダルを手にした。今年2月のミラノ・コルティナ五輪で3つの銅メダルを加え、日本女子最多となる通算10個の五輪メダルを獲得。26年4月に現役引退を発表した。

(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)

1 2

二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
ABEMA
docomo
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集