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ラグビー日本代表、W杯ポジション別最新序列 「8割完成」の真偽…世界一デカいFW第3列に現れた「20番の職人」

PRとHOは収穫のある3連戦、スクラムとラインアウトに進化【写真:(C)JRFU】
PRとHOは収穫のある3連戦、スクラムとラインアウトに進化【写真:(C)JRFU】

PR/HOは収穫ある3連戦 LOは世界トップクラスの3枚が揃う

<PR/HO>

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 ポジション順に見ていくと、PRとHOは、かなり収穫のある3連戦だった。進化を感じさせたのは、スクラムとラインアウト。勝敗にも影響するセットプレーだが、スクラムの成功率をみるとイタリア戦の89%(失敗1回)以外はアイルランド戦、フランス戦では100%というパーフェクトな数値を残している。フロントローで主力となったのは、岡部崇人(横浜E)、竹内柊平(東京サントリーサンゴリアス)の両PRと原田衛(BL東京)のトリオ。PR2人は元来スクラムの強さよりも機動力が武器の選手だが、先発したイタリア戦、アイルランド戦と、ヨーロッパでもスクラムに拘りを持つ相手と組み合えたのは評価していいだろう。

 ここは、元ニュージランド代表PRとして108キャップを誇るオーウェン・フランクス・アシスタントコーチの指導に負う部分は大きい。現役引退から本格的なコーチ経験は浅いが、世界トップレベルで組み合ってきた経験値を活かしながらも、日本選手特有の低さ、FW8人が相手以上にパッケージを固めて押していくメカニズム、そしてスクラムの優劣のキーになる組み合う瞬間のヒットスピードと取り組んできた。

 低さに関しては、試合中や練習でスクラムを組む時にも選手が「シバ=芝」という合言葉を掛け合っているが、これは芝生に足が着くような低さと8人のパックの強さを意識したキーワードだ。個人のパワー、経験値では劣ったとしても、組織で対抗しようという意識付けが選手にも浸透することで、さらに一体感のあるスクラムを実現している。後で触れる2列目に身長200cmクラスの選手が並ぶことも、スクラムで重要な2列目からの押しという点では大きなプラス要素だ。

 原田は、巨漢揃いのスーパーラグビーのモアナパシフィカで1シーズン揉まれてフィジカリティーを高め、低い姿勢でのコンタクトにも磨きを掛けて帰って来た。この“ファーストセット”を追走するのが、フランス戦で先発出場したPR大塚壮二郎(関西学院大4年)、為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、そしてHO江良颯(同)だ。大塚は、まだ大学生ながらフィールドプレー(コンタクト)、スクラム双方で178cm、110kgというサイズ以上のフィジカルの強さを印象付ける。

 完敗に終わったフランス戦でも、大塚は25分に中盤のFW戦で194cm、104kgのFLレニ・ヌシ、203cm、110kgのLOフロリアン・ヴェラアグに当たり負けせず前進して、36分の敵陣ゴール前の肉弾戦では、ラックサイドを突いた江良をサポートして自らデビュー戦トライをマークするなど高いポテンシャルを証明した。本人は「(観衆)5万人って結構少ないなと感じました。あのトライは江良さんのだと思うので何も感じていません。モールについては、相手に分析されていましたね」と代表デビューでの淡々とした口調に大物ぶりを感じさせた。エディーも会見では日本語で「素晴らしい。超速ラグビー(を見せた)。めちゃ素晴らしい」と評価したように、ポテンシャルは間違いない。学生という立場で来年10月までにどこまでインターナショナルレベルでの経験値を伸ばせるかが注目される。

 江良については、ここまでの国内リーグでのパフォーマンス、そして昨季代表でのプレーぶりで評価は揺るぎないものになりつつある。「追走」という表現よりもむしろ原田に肉迫しているという評価が適切かも知れない。

 その一方で、双方スクラム成功率100%だったフランス戦では、数字に残らない課題も見られた。29分の自陣での相手ボールスクラムではコラプシング(スクラムを崩す反則)で相手がアドバンテージを得るなど、データにカウントされない「失敗」や、かなり押し込まれた場面も目についた。この苦戦も、先に触れた2列目からの押しで、逆に重圧を受けていた印象だ。一度組み合った後に、2列目からの再プッシュで押し込められているスクラムの状態を見ると、相手の2、3列目からの押し込みをどう受け止め、対応していくかは今後の課題になるだろう。

 夏のゲームでは、どのチームも国内リーグなどの影響で万全の準備を組めていない印象もあった。秋に対戦するイングランドやスコットランドとのスクラム戦で、どこまで大型選手が揃う相手の2、3列目からの押しも含めたスクラム戦で対抗できるかも、この先の進化のための課題になるだろう。

<LO>

 2列目(LO)については、この3連戦でも主力を張った201cmのワーナー・ディアンズ主将(BL東京)、208cmのハリー・ホッキングス(東京SG)に、ベンチスタートの202cmのマイケル・ストーバーグ(BL東京)という世界トップクラスの高さを誇る3枚が揃う。この3人に、フランス戦はFLで先発した198cmのエセイ・ハアンガナ、同じくNo8を務めた195cmのジャック・コーネルセン(埼玉WK)らが3列との兼務で絡んでくる。イタリア戦から順に100%、92%(ミス1回)、91%(同)というラインアウト成功率が、彼らの高さの“恩恵”を指し示している。強いて「足りないもの」を挙げるとすると、アイルランド戦、そしてとりわけフランス戦で感じた地上戦でのパワーゲームでのフィジカリティーだ。

 高さ、重さともにワールドクラスのLO勢だが、重厚さよりも日本代表ならではの機動力にも強みを持つタイプの選手が揃う。ワーナーが、スーパーラグビーでの経験でボールキャリーの力強さに成長は感じさせるが、フランス代表で先発した142kgのエマニュエル・メアフーのような厚みと馬力で相手を押し込んでくる、局地戦に圧倒的な力を発揮するタイプは今の日本代表にはいない。ラスト10分で突き離されたアイルランドにも、サイズこそ193cm、113kgながら肉弾戦で抜群のしぶとさ、激しさを見せるタイグ・バーンのような仕事人が日本を苦しめた。

 この厚みや重さ、パワーを日本代表が必要とするのか、それとも現行のワールドクラスの高さを誇りながらワークレートやスピードも併せ持つ機動系LO勢で勝負をしていくのか。ここは指揮官の決断次第だが、エディーがフランス戦の敗因と指摘したモールを見ても、このフィジカルバトルでの重みと押し込む力の差をどう埋めていくかは大きな課題でもある。W杯登録の33人は、どのポジションも潤沢なメンバー編成は難しい枠数ではあるが、ここまでに挙げた200cm台の3人と3列も兼務するメンバーに加えて、怪我で代表不参加となったルアン・ボタ(S東京ベイ)のようなフィジカル勝負に圧倒的な強さを持つ駒を準備するのも一考に値する。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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