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“ミニW杯”で世界10傑から金星 敵将が「弱点」と睨むも…覆したラグビー日本代表の「9番・10番」の躍動

敵将「正直、9番、10番の2人がこの試合の弱点ではないかと…」

 ワーナー主将同様に“海外組”でインパクトを残したのはSH齋藤直人(東京SG)。2シーズンのフランスTOP14王者スタッド・トゥールーザンでの経験を終えて、古巣に復帰したばかり。イタリア戦で、欧州最強とも呼ばれるクラブでの経験を感じさせたのはキックと防御だった。

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 国内でプレーしていた3シーズン前(23-24年リーグワン)からの進化をいきなり見せたのは前半5分だった。イタリアの自陣10mラインでのスクラムからの右展開。相手が誇るファン・イグナシオ・ブレックス―メノンチェッロ両CTBによるパス交換に、廣瀬―ライリーのCTB陣が崩される。さらにパスが繋がれば独走態勢に入る危機で、メノンチェッロに新鋭・伊藤がタックルを浴びせると、パスを受けたブレックスに突き刺さったのが齋藤だった。起点のスクラムから必死のカバー防御に戻っての好タックルだった。

「(防御の)システム自体が、代表とトゥールーズは一緒なんです。SHがラックの後方でチームをコントロールするんじゃなく、防御ラインの1列目に入って一人のディフェンダーとなるんです」

 そう満足そうに振り返った齋藤だったが、35分にも中盤でのハイパント好捕から独走に入ろうとしたイタリアの新鋭WTBマリック・ファイサルを背走からの好タックルで抑え込む。後半15分には、身長202cmのLOアンドレア・ザンボニンへ2プレー連続のタックルに入り独走を許さなかった。このタックルは、相手が10-24のビハインドから、点差を2トライ2ゴール以内に詰めようと挑んできた攻撃の勢いを停滞させる価値ある一撃だった。

 キックに関しても、自陣のラックからセンターライン付近まで陣地を押し戻すSHからのキックを再三披露。日本以上に、9番からのキックが攻撃の起点、陣地を進める術となっているフランスでのスタンダードを、桜のジャージーにも落とし込んだ。結果的に失敗には終わったが、残り8分に相手キックをキャッチしての左43mのDGも、相手に隙を与えず、どこからでもスコアの可能性を追求しようというアグレッシブな姿勢を印象付けた。

 試合後の敗軍の将の言葉が印象的だった。

「正直に言いますと、9番、10番の2人がこの試合の弱点ではないかと思っていました。齋藤に関してはチームがフランスの決勝戦までの試合を終えたばかりで日本に戻って来たので、適応するのにすこし苦しむんじゃないかと思っていたんです。伊藤も、まだ若い大学生で、今日が初テストマッチ、デビューだったので、タフな条件でプレーすることになるだろうと予測していたんですが、結果的にこの2人がとりわけキーになっていた。特に伊藤は、実践したプレー全てが良かったし、自身のキャラクターもしっかりと見せていた印象です。持ち味のスピードを出せていたし、スペースの見極めキックと、センスを感じさせた」

 アルゼンチン代表SOとしてW杯得点王という実績も残し、イタリア代表を着実に世界トップ8クラスへと導こうとしている名将ゴンサロ・ケサダHCは、素直に日本のHB団の予想を超えた活躍を認めた。この新旧HBコンビだけではなく、先に挙げたワーナーら主力メンバー、廣瀬らキャップ1桁台の力が、勝利の原動力として歯車が噛み合うように機能し始めたのが、3シーズン目を迎えたエディージャパンの現状だ。

 ゲーム全体を通せば、この試合のマン・オブ・ザ・マッチで、両軍トップの20タックル(うち成功19回)を叩き出したFLベン・ガンター(埼玉WK)を中心として出足の速いタックルで相手に重圧を掛け続け、高いワークレートを武器に接点から速いテンポの球出しが生んだアタック、そして昨季より精度の増したキックゲームで優位に立てたことが、日本の勝因だった。

 数値を見ると、テリトリー(地域支配)やボールキャリー、アタックの走行距離など、ゲームの主要スタッツに大差は無かったが、敵陣22mライン内への侵入の回数(日本9、イタリア5)、侵入回数での得点率(日本2.6点、イタリア2.0点)と差を見せられたのは、先に挙げた攻守のエフォート(努力)の恩恵だ。終盤になって足をつる選手も見受けられたイタリアを横目に、桜のジャージーの15人は運動量が落ちることなく動き続けていた。このタフさも、昨季までの積み重ねと6月13日からの宮崎合宿の成果と評価していいだろう。

 画期的な新規大会を見渡せば、まだ11月の最終戦までの7試合の初戦を終えただけだ。敗れたイタリアもチーム集合から数日の練習、選手の多くも2か月近く実戦から遠ざかった中で、母国やヨーロッパにはない多湿な遠隔地でのシーズン開幕戦。世界10位としてのフルスロットルの地力とは程遠い中での試合だと差し引いて考える「1勝」だったのは間違いない。昨季もテストマッチ第1戦はウェールズに勝っているだけに、第2戦とそれ以降の戦いぶりが注目される。

 今後対戦する相手の世界ランクを見ても、イタリアを下回るのは11位のウェールズのみ。この日の1勝は、昨年の敵地戦で10-41で完敗した今週末のアイルランド(3位)、翌週日本で迎え撃つフランス(4位)への“挑戦権”を得たに過ぎない。萌芽を見せ始めた集散力と連携力を進化させた「超速ラグビー」と、加速させるアグレッシブなキックを使ったアタックを、どこまで高めて「イタリア以上」の強豪からの勝利を掴めるのかが重要だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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