“意図しないドーピング”の悲劇を繰り返さない 複雑化する規則…日本人アスリートを守る新たな防衛策とは
2月に開催されたミラノ・コルティナ五輪では、開幕前にバイアスロンのイタリア代表選手にドーピング規則違反があったものの、前回大会でフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会)から禁止薬物が検出され、団体金メダルが剥奪される騒動に発展したような大きな問題は、今のところ報告されていない。

専門家に聞く日本のアンチ・ドーピングの現状と課題
2月に開催されたミラノ・コルティナ五輪では、開幕前にバイアスロンのイタリア代表選手にドーピング規則違反があったものの、前回大会でフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会)から禁止薬物が検出され、団体金メダルが剥奪される騒動に発展したような大きな問題は、今のところ報告されていない。
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その一方で、近年複雑化するアンチ・ドーピング規程の対応に、各国の競技団体は追われており、競技別世界大会からは規則違反の報告が上がってくる。世界から「優等生」と見られている日本のスポーツ界は、こうした状況にどのように向き合っているのか。一般社団法人日本スポーツフェアネス推進機構で代表理事を務め、長年にわたってアンチ・ドーピングの最前線に立つ河野一郎氏に、日本の現状と課題について話を聞いた。(取材・文=長島 恭子)
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1999年、蔓延するドーピング問題に対応するため、IOC(国際オリンピック委員会)が主導しWADA(世界アンチ・ドーピング機構)を設立すると、2003年には全世界、全競技の統一ルールとして『世界アンチ・ドーピング規程(WADC)』を発効。以降、6年ごとに改定されている。
WADCは、改定されるたびに複雑さが増している。スポーツドクターであり、現在は一般社団法人日本スポーツフェアネス推進機構の代表理事として国内外のドーピング対策に関わる河野一郎氏は、現状についてこう語る。
「ドーピング問題は当初、医学の領域が主でした。それが科学の領域、法律の問題と移り変わり、今はインターポール(国際刑事警察機構)と連携する捜査の時代に突入しています。それに伴い、世界アンチ・ドーピング規程も改定ごとに縛りが厳しくなり、複雑さが増しています」
河野氏曰く、「日本のアンチ・ドーピング活動は、世界的に見れば『優等生』と評価される」という。しかし、そんな日本も一時期、危機的な状況に追い込まれたことがある。
ロシアアンチ・ドーピング機構および陸上競技連盟による組織的なドーピングが発覚したのは2015年。これを受けてWADAは2018年4月、世界アンチ・ドーピング規程遵守に関する国際基準を厳格化。世界大会を開催する国を対象に、アンチ・ドーピング規程の運用監査をスタートした。当時、2019年のラグビーワールドカップ、2020東京大会の開催が決定していた日本も対象だったが、WADAから深刻な問題を指摘された。
「実は日本は他国とは異なる、特有の課題を抱えています。その主たるは財源の問題。多くの国がドーピング検査を中心としたアンチ・ドーピング活動を国費で支えているのに対し、日本は民間資金であるスポーツ振興くじ(toto)の助成金で実施されています。日本は東京2020大会に向けて法整備を進めていましたが、問題になったのはドーピング検査を各競技団体が個別に助成金を申請し、行っていた点です。『競技団体が申請しなければ検査が行われないリスクがあり、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)の独立性に問題があり、アンチ・ドーピング規程の基準を満たさない』とWADAより改善勧告されました」
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