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“意図しないドーピング”の悲劇を繰り返さない 複雑化する規則…日本人アスリートを守る新たな防衛策とは

日本人アスリートが陥りがちな「性善説」の罠

 現状のままではラグビーワールドカップも、東京2020大会も開催できないうえ、日本人選手団が資格停止処分を受ける恐れもある。そこで急きょ、国内のアンチ・ドーピング体制の整備に着手。スポーツ庁とも連携し、国を挙げて国際規程に基づくよう対応にあたったと、河野氏は振り返る。

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「この時、検査の財源について審議・決定する第三者機関として、J-Fairness(日本スポーツフェアネス推進機構)を設立し、JADAが競技団体の財政状況などに関わらず、ドーピング検査を実施できる仕組みを構築し、何とかWADAからOKをもらえました。その結果、ラグビーワールドカップや東京2020大会も無事、開催することができ、現在のロシアのように、日本選手団が出場できないという最悪の事態を免れた、というわけです」

 しかし、多くの国がドーピング対策に国費を投じるなか、日本のアンチ・ドーピング活動は、依然toto助成金や民間企業の協力なしでは成立しない。日本はWADA公認のドーピング分析機関も、民間企業が運営。これは世界的に見て、極めて稀なケースだという。

「今は分析機関にも、高度な研究や論文発表などが求められるため、コストの負担が重くのしかかります。現在はスポーツ庁と連携したコンソーシアム形式で対応していますが、国費投入型の諸国に比べると危うさは否めません」

 もう一つの懸念は、アスリートたちのドーピングに対するリテラシーの欠如だ。

 日本のアスリートがドーピング検査でサプリメント等の摂取を起因とする陽性反応が出た場合、故意ではなく、意図せず摂取・使用したことが原因であることが、ほぼすべてと言っても過言ではない。「それを防げないのはアスリート側の自覚と勉強の不足」と河野氏は指摘する。

「そうなるのは日本の環境や文化も影響しています。まず日本は、選手自身があれこれ考えなくても周りがやってくれるという『お膳立て』が整いすぎています。特にマネージャーなどのサポート体制が充実しているプロチームはその傾向が強い。

 そして日本の選手は性善説に基づいて行動しがちです。親族や近しい関係者、あるいは企業から薦められたり、差し入れられたものを『断るのは悪いから』『あの人はいい人だから』などと疑いなく口にしたり、使用したりする人が多い。また、テレビなどのメディアでアスリートが口にする商品を見ると、疑いもせず『いいもの』と認識してしまいます。

 しかし、どんな競技レベルの選手であれ、若年層であれ、スポーツ選手である以上、サプリメントを摂取する場合には、きちんとした第三者機関による検査が行われている製品であっても絶対的な安全性は保証されないことを認識すること、そしてその上で成分や分析結果、製造工場等の情報を、自分自身で確認し、判断する習慣を身に着ける必要があります。今のままでは、一歩、海外に出れば足をすくわれかねません」

 なかでも河野氏が問題視するのは、最新の情報を自ら入手するのが難しいアスリートや、中高生や大学生といった若年層だ。アスリートはアンチ・ドーピング規則違反から自分を守るために、規程を理解し、行動することが求められる。現在、未来あるアスリートに適切な教育と正しい知識をいかに届けていくかに課題感を抱く。

「最初に触れたとおり、アンチ・ドーピングに関するレギュレーションは複雑化しています。アスリートが自己責任において正確な情報を得るには、内容が多様で複雑すぎるし、調べる時間も足りない。多くのアスリートは調べ方も分からないと思います。アスリートの教育や競技大会での検査運営を行う国内の多くの競技団体でさえ、限られた人員で膨大な資料を読み、高度な法務や科学的知識を要する業務を遂行するのは困難です」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。人物インタビュー、ヘルスケア、ダイエット、トレーニングの分野を軸に、雑誌、書籍等で編集・執筆を行う。担当書籍に『すごい股関節』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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