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「フィジーより日本で挑戦を」「開花した姫野和樹の後継者」 2027年W杯を狙う次代のラグビー日本代表の原石5人を発掘

ラグビー日本代表入りを目指す選手による15人制男子トレーニングスコッド(JTS)菅平合宿が6月4日から8日間行われ、リーグワン上位4チーム以外と大学から35人が集まった。このメンバーの中から、トップ4の選手も参加する16日からの代表合宿(宮崎)にピックアップされるセレクション合宿。正代表は12日に発表予定だが、オーストラリアで開催される2年後のワールドカップ(W杯)も踏まえた次代の桜のジャージーへの可能性を秘めた原石5人にスポットを当て、代表入りへの思いや課題を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

菅平合宿で檄を飛ばすエディー・ジョーンズHC【写真:吉田宏】
菅平合宿で檄を飛ばすエディー・ジョーンズHC【写真:吉田宏】

菅平合宿に参加した35人から5人をピックアップ 代表入りへの思いや課題を聞く

 ラグビー日本代表入りを目指す選手による15人制男子トレーニングスコッド(JTS)菅平合宿が6月4日から8日間行われ、リーグワン上位4チーム以外と大学から35人が集まった。このメンバーの中から、トップ4の選手も参加する16日からの代表合宿(宮崎)にピックアップされるセレクション合宿。正代表は12日に発表予定だが、オーストラリアで開催される2年後のワールドカップ(W杯)も踏まえた次代の桜のジャージーへの可能性を秘めた原石5人にスポットを当て、代表入りへの思いや課題を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

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 標高1400mの強い紫外線の下で行われたサバイバルキャンプで、次代の“原石”たちが輝きを放った。

「このキャンプの目的はセレクションです。日本代表にのし上がっていくための最後の合宿なのです。宮崎での代表合宿の枠は35人。リーグワン上位4チームから15人を選んでいるので、JTSの選手はそこへ勝ち抜いていってほしい」

 昨季に引き続き夏合宿の聖地・菅平でのサバイバルキャンプを開いたエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が、集まった35人への期待をこう語った。誰が日本代表35人に選ばれるのかは12日のメンバー発表を持つしかない。今回紹介する5人も宮崎行きの航空券を約束されてはいないが、2年後に迫るオーストラリアが舞台の次回W杯へ向けて、溢れるようなポテンシャルと可能性を輝かせ始めているのは間違いない。

フィジーより日本代表でのチャレンジを選んだヴェティ・トゥポウ(中央)【写真:吉田宏】
フィジーより日本代表でのチャレンジを選んだヴェティ・トゥポウ(中央)【写真:吉田宏】

 先ずは、合宿メンバーの中でもトップクラスのポテンシャルを発散するのがFLヴェティ・トゥポウ(静岡ブルーレヴズ)。フィジーから摂南大学留学を経て、昨季静岡BR入り。デビューシーズンは出場6試合だったが、今季はチームの全19試合に出場。第4節以降はすべて先発出場と不動のメンバーに成長した。190cm、121kgのサイズは、世界のバックロー(BR=FW第3列)の中では決して破格のサイズではないが、そのしなやかなランとフィジカリティーの融合には、危険な爆発力を秘めている。

「今はまだちょっと勉強。でも、もっともっと頑張りたいです。去年ブルーレヴズに入った時から、ターゲットもジャパンナショナルチームになりました。(母国)フィジー代表? いま強いけど、ジャパンでチャレンジしたいです」

 単独インタビューは通訳なし。たどたどしさは残すが、摂南大で鍛えた日本語で、桜のジャージーへの思いを訴えた。先に「しなやかなラン」と形容したが、その源泉は小中学生時代にある。ラグビーと並行して打ち込んでいた陸上競技で、100m、200mのフィジー国内2位という実績を持つ。

「でも、15歳からはラグビー一本。体も、めちゃ太くなったしね」と苦笑したが、陸上仕込みのランはラグビーピッチでも生かされる。長身ながら重心を落とし気味のフォームから、長い脚がなめらかに前へと伸びる。その独特の加速が防御側の間合いを狂わせ、フィジアンらしいブレーキの利いたステップも交えて、このブラインドFLの攻撃力をブーストする。コンタクトでのハードヒットだけなら他にも多くの海外勢カテゴリーA選手はいるが、機動力とフィジカルのコラボレーションがトゥポウの存在感を際立たせる。

 エディーはじめコーチ陣からのアドバイスにも、菅平で取り組んでいる。「もっともっとハード(に)ボールキャリーする。後は、ディフェンスの時は(1度タックルした後に)早く立ち上がって次のセットをする」。合宿で初めて“超速”を体感したことで、代表で機能する体へのモデルチェンジにも着手。「いま、ちょっと体が大きいですから、多分もっとシェイプして、あと5kgは減らしたい。いまの体重だと疲れるけど、この合宿の後にはもっと走れるはず」。自己申告では125kgという体重を超速仕様に軽量化して、次のステージを狙う。

 溢れるようなポテンシャルを感じさせるトゥポウだが、「いま必要なのは、自分のポジションでの役割でもっともっとレベルを上げたいです。なぜなら、まだ自分には力はないから」と自己評価は謙虚さが滲む。それでも、ピッチの上で貫く強い姿勢が25歳のBRのパフォーマンスを特別なものに仕立てている。

「レヴズに入ったときも、リーグワンでもそうだったけど、どんな凄いレジェンドが相手でも、グラウンドに入れば自分がベストなんだというメンタリティでやっています。この合宿でもオールアウト(全てを出し尽くす)でやります」

 この旺盛さ、ポジティブさの裏には、フィジーの高校から日本の摂南大学留学を決めた思いがある。文化も気候も異なる日本を選んだ理由は「フィジーでいいチャンスがなかった」のも大きいが、「ファミリーを助けたい」という一心から。留学を経て、日本でプロ選手として成功することにヴェティは賭け、それを1歩ずつ叶えてきた。フィジカルパワーとスピードという才能を併せ持つトゥポウだが、真のオールアウト、全てを出し尽くすバーストアウトまでには、どこまで伸びしろがあるのか。2027年までの進化が楽しみでならない存在だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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