「フィジーより日本で挑戦を」「開花した姫野和樹の後継者」 2027年W杯を狙う次代のラグビー日本代表の原石5人を発掘

BKにも輝き始めた原石が…エディーの掲げる「超速」のコンダクターに挑戦するSO
BR2人の可能性を見てきたが、BKにも輝き始めた原石がいる。3月1日に行われたリーグワン第10節浦安D-Rocks戦で途中出場。アーチエントリーでトヨタヴェルブリッツでの公式戦デビューを果たしたSO小村慎也(トヨタ)が、エディーの掲げる「超速」のコンダクターに挑戦する。
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「ずっと日本代表になりたいと思っていましたが、こんなに早くチャンスが巡って来るとは思っていなかった。強度の高い練習と、ハイレベルの選手が集まっているので、自分としても楽しいなという印象です。エディーさんからは、超速ラグビーを掲げているので、テンポを上げてどんどん相手ディフェンスにセットされないように、そして逆に自分たちが早くセットして相手にプレッシャーをかけていくようにと言われているので、それを意識してやっています」
一般社会なら新入社員の研修が終わるか終わらないかという23歳だが、物怖じも緊張もない。この若さで、ラグビー選手としてよりよい環境を求める旅を続けてきた。大阪でラグビー強豪として知られる菫中学校で全国制覇を果たすと、「花園」という夢よりも、ラグビー王国ニュージーランドでの、選手としての自己投資を選んだ。
留学先はハミルトンボーイズ高校。オールブラックスのトライゲッター、WTBセヴ・リースらを輩出する“王国”でも名立たる強豪校だ。現在レッドハリケーンズ大阪でプレーする兄・健太と同じ進路で腕を磨くと、日本へ踵を返して、大学最強の帝京大学で今春のVメンバーにも名を連ねた。
その可能性を発散させたのはトヨタVでのデビュー4戦目から。初めてスタメンで10番を背負ってピッチに立つと、そのまま最終節まで6試合続けて司令塔を務めた。代表ゲームメーカーとしての資質を強く印象づけたのは、その視野の広さと判断力。相手の陣形、後方スペースを読んだグラバー、ボックス、クロスといった多彩なキックで、アウトサイドBKを走らせた。
その目の効き方について聞くと、若き司令塔は興味深い話をしてくれた。
「ニュージ―ランドでやってきたというよりは、昔からそういうプレースタイルが好きでした。小学校、中学校の頃からそういうプレーをしていたので」
つまり、その判断力、そしてキックを駆使したアタックは、ラグビー王国で学んだものではなく、子供の頃から自分が身に付けていたというのだ。このスペース感覚を、幼少期から身につけている選手が日本にいること自体が喜ぶべきことだろう。
そんな天才肌の司令塔の祖父は、伏見工業(現京都工学院)高校を全国区の強豪に育てた“泣き虫先生”こと山口良治元監督。ラグビーのDNAは孫にも受け継がれているのだが、教え子の故平尾誠二さんの姿を想うと、血縁こそないが小村が故人も纏った桜のジャージーの司令塔の座に挑んでいること自体、何か因縁めいたものを感じざるを得ない。
帝京大では主にFB、下級生ではWTBなどアウトサイドBKを中心にプレーしていたこともあり、小村本人も「SOは4年ぶり」とまだまだ試し運転の領域という。それでも、戦況を見抜く視野にはSOの資質でもあるフレア(閃き)を感じさせる。昨季、エディーが「現状ベストのSO」と名指しした李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)、昨季代表入りから今季のJTSにも招聘される中楠一期(リコーブラックラムス東京)と伊藤耕太郎(同)、そしてFB兼務で成長著しい松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京)ら代表合宿経験者に、23歳の司令塔がどう挑んでいくか。経験値では、一見まだ差があるように見える10番争いだが、実際には、先頭集団と新鋭SOの間には、そんなに大きな開きはないはずだ。