「フィジーより日本で挑戦を」「開花した姫野和樹の後継者」 2027年W杯を狙う次代のラグビー日本代表の原石5人を発掘

“姫野和樹の後継者”大阪桐蔭高校―帝京大学―トヨタ自動車の和製BR
トゥポウ始め好素材が居並ぶFW3列だが、和製BRにも今季リーグワンでの躍進から菅平に呼ばれた注目の素材がいる。
【注目】スポーツブラは「つけないとダメ」 胸のゆれ軽減、女子トップ選手がCW-X激推しのワケ(W-ANS ACADEMYへ)
「リーグワンが終わって直ぐの合流(ジャパンXV大分合宿、5月16日~)だったので、すごくタフでしたが、初めてで新鮮ですし、1日が凄く濃くて、自分のチームとは違うプレースタイル、プレー内容で、成長出来ているんじゃないかなと感じています」
これまでの合宿についてこう充実ぶりを滲ませたのは、リーグ9位の三菱重工相模原ダイナボアーズから選出された吉田杏だ。トヨタヴェルブリッツから移籍2シーズン目。今月30日に30歳という年齢での代表挑戦となったが、相模原DBでのパフォーマンスを見れば誰もが頷ける選出だった。ボールキャリー(ボールを持ってプレーした回数)267回は、1位のCTBヴィリアミ・タヒトゥア(静岡BR)とわずか1回差。日本生まれの選手で、この項目トップ10入りは吉田一人だった。
数値以外でもタックル、ジャッカルと無尽蔵のワークレートが光った。コンタクトの多さもあり消耗の激しいBRだが、公式戦全18試合で先発出場。途中退場はわずか2試合、合計19分のみとピッチに立ち続けた。大阪桐蔭高校―帝京大学―トヨタ自動車と、サイズとパワー、そしてスピードを併せ持つ逸材と期待され、大学、トヨタの先輩でもある姫野和樹の後継者と見られてきた。トヨタ時代は、その姫野の陰に隠れたような役回りだったが、新天地でようやく資質を開花させた。
「特別何かを変化させたわけじゃなくて、意識が変わったのかなと思います。フィジカルの部分で負けた覚えがないというくらいの1年だった。ワークレートって、言葉だと結構簡単ですけど深い言葉だと思っていて、そこで自分自身一貫性を求めたシーズンだった。ボールキャリーだったり、ブレークダウン、タックルの質と回数を、すごくこだわった結果じゃないかと思っています」
トヨタ時代は、姫野を筆頭に世界クラスの選手が居並んでいた。だが相模原では、実績、経験値とも吉田がチームをリードする役割に転じたことも、自身の成長を後押しした。合宿メンバーのリストでのポジションはLOだが、吉田自身は「エディーさんからは基本的には6、7番で考えていると言われました」と話している。先月行われたジャパンXVのNZU(ニュージーランド学生代表)戦、香港戦で、エディーは吉田をLO、BR両ポジションで1試合ずつ先発で起用。所属チームで定位置のBRと同時に、代表ではLOのカバーという可能性も試されている。シーズン途中で怪我を抱えていた姫野のコンディション次第では、尊敬する先輩に代わっての宮崎行きも十分可能戦がある。
「エディーさんからは、リーグワンでトップのワークレートをみせていたと話していただいていて、僕しか持っていないボールキャリーだったり、そこでのフットワーク、スピードの部分を評価していただいた。後は、ブレークダウンであったり、ラインアウトのジャンプだったりで、リーグワンじゃなく、テストマッチで使えるようなレベルまで引き上げて欲しいと言われています。自分しかないものをアピール出来たら(代表に)近づけるんじゃないかなと思います」
本格的に取材を始めた帝京大時代から変わらない、決して饒舌とはいえない口調だが、昨季リーグワンでのパフォーマンスへの自信が言葉に籠る。菅平合宿前のNZU戦から招集されていた吉田だが、このカードから香港戦と続いた3試合では、持ち前のスピードを湛えたボールキャリーを何度も見せた。
「3試合通していい部分は出せたかなと思いますし、伸びしろという面で、いろいろなレビューもいただいている。そこを修正しつつ、これからもいい3試合が出来たら、もっともっとレベルが上がるんじゃないかなと個人的には思っています。やはり、試合をしないと経験値が上がらない。なので、代表に選ばれて、この先の3試合でメンバーに食い込んでいけたら、もう一段階上のステージへ行けると思う」
2027年へ向けてエディーら首脳陣から更に高い評価を得るには、これまでの相手からワンステージ、ツーステージ上の「マオリ」や、テストマッチ17連敗中とはいえ23年W杯ベスト8のウェールズ相手にどこまで渡り合えるかは、経験値を上げることも含めて、30歳目前のチャレンジャーにとっては大きな意味を持つ。