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ポスト福岡堅樹は“滑り込み”代表入りの新星 サンウルブズ戦で注目「3人の新戦力」

“心の強化”で遅咲きデビューに挑む森川由紀乙【写真提供:JRFU】
“心の強化”で遅咲きデビューに挑む森川由紀乙【写真提供:JRFU】

遅咲きのルーキー森川の武器はPR離れした機動力

 帝京大では大型PRとして活躍したが、サントリーでは6シーズン目の20-21年TLでレギュラーの座に定着。その活躍を評価されて代表合宿に招かれた。PRはスクラムなどセットプレーの重要ポジションだが、森川の場合はFW第3列やBKのようなライン参加、スピードで魅せる。NECとのトップリーグプレーオフ2回戦でみせた、前半38分のライン参加からの華麗なトライなどフィールドプレーで異彩を放つPRだ。

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 初キャップに挑む今回の代表合宿でも、「得意なフィールドプレーやコンタクト、フィジカルの部分では、自分の強みとして出せていると思う。サントリーとは違うスクラムの組み方、自分のちょっとしたズレなどを調整していきたい」と強みと課題を指摘する。

 当時最強を誇った帝京大時代の実績を踏まえれば、入社1年目から期待は高かった森川だが、サントリーでも日本代表でも遅咲きとなった理由はスクラムの安定感。180センチ、113キロのサイズを見てもポテンシャルは十分に持つ大型PRだが、チームの期待に応えられないシーズンが続いた。それが、20-21年シーズンはTL全10試合中8試合で先発出場と急成長したのは、スキルとフィジカルの進化と同時に、自分と向き合うためのハートの強化が後押しした、

 レギュラーポジションを掴めずに来た過去を、森川は「大学では出来ていても、TLでは要求されるレベルに達しないから、1番で出ることができなかった。自分を周りと比べてしまうことや、自分の弱さを言い訳したり、逃げ道を作ってしまっていた」と振り返る。常に逃げ道を作り、現実に向き合えなかった自分の弱さを変えたのは、チームの仲間であり、コーチ、スタッフたちだった。

「周りの仲間やサンゴリアスのスタッフが、しっかり向き合ってくれた。そこで自分も本当に変わりたいと思って、逃げずに自分にしっかり矢印をむけて、スクラムや自分のマインドセットを見つめ直した。それが結果的に日本代表に呼ばれて、自分のラグビー人生で一番のチャンスを与えてもらえたと思っている」

 それまで避けてきた自分の能力という現実に向き合い、課題1つ1つに取り組み、克服していく姿勢が、森川の成長を後押しした。

「サンゴリアスの青木(佑輔)アシスタントコーチ、S&C(ストレングス&コンディショニング)コーチの若井(正樹)さんからは、言われたことをしっかりと自分の中で落とし込んで、自分が何をしないといけないか(を明確にした)。例えばスクラムだったら(問題を)1つずつクリアすることで自分の成長を感じて、それが相手からペナルティーを奪えるようになった。今回1つ獲れた、次の試合では2つ獲れた、自分は反則をしなかったという小さな自信を積み重ねることで、自分もまだ出来ると感じることができた」

 技術やフィジカルの強化は、おそらく大前提のはずだ。朴訥と話す言葉からは、それ以上にハートの強化がラグビープレーヤーとしての成長を後押ししてきたことが判る。サントリーでのレギュラー獲りに繋がった、現実から逃げず、自分と向き合いながら課題を克服していく姿勢を、今度は、世界のトップ4を目指す日本代表でのポジション争いで生かす番だ。

 3人の選手をピックアップしたが、初キャップに挑む13人は、すべて2年後のフランスで活躍できるポテンシャルを持つアスリートばかりだ。すでに能力を輝かせ始めた選手もいれば、秘めた才能を磨き上げ、これから輝かせる選手もいるだろうが、指揮官やコーチの評価をどう塗り替えていくかが勝負になる。

 10日に発表されたサンウルブズ戦の先発メンバーの大半を2019年の2杯戦士で固めたことについて、ジョセフHCは「(長く活動がなかった後の)最初の試合なので、ある程度日本代表のゲームを理解している19年にプレーしている選手が出るべきだと考えている」と説明している。次のライオンズ戦では、序盤から安定感のある試合運びを重視して、経験値の高い布陣で固めたい思惑があるのは間違いない。同時に、23年へのスタートラインとしても、これまで結果を残してきたメンバーが優先されていると考えていいだろう。

 新たな選手たちが、このような首脳陣が設けた“順位付け“を変えていくためには、現在の評価を塗り替えるプレーやパフォーマンスが不可欠なのは明らかだ。ジョセフHCも「別府での強化合宿はもう終わった。これからは新しい選手たちが、限られた(出場)時間の中で、しっかりと持っているものをすべて出し切ることが非常に重要だ」と指摘する。自分を限界まで追い込み、今持っている能力を101%、120%、そして150%へ引き上げることしか、思い描く代表でのポジションに辿り着く道はない。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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