友達と雑談、聞こえない耳に引け目…「ずっと無言だった」少年が全国へ 陸上が変えた人生「障がいなんて関係ない」――北海道高等聾学校・池田悠真

大変だった学校生活「全然喋らなくて。ずっと無言でした」
生まれた瞬間から、池田の世界に音はほとんど存在しなかった。
乳児の頃から大きな音や声に反応せず、おかしいと思った祖母が病院に連れて行ったことで障がいが判明。周囲に教えられるまで、自身にハンデがあることすら意識していなかった。
聴覚障がい程度等級は3級で、両耳の聴力レベルは90デシベル以上。耳元で大きな声を出さないと聞こえにくいとされる。補聴器を付ければ日常生活に支障はないが、周囲の音も一緒に増幅されるため、都会の騒音や生活音が多い環境では会話が難しい。
学校生活は大変なことばかりだった。
複数人の会話を聞き取れず、雑談に参加できない。障がい者であることを引け目に感じ、誰かに話しかけることすら諦めるようになった。
「小学生の時は、全然喋らなくて。ずっと無言でした。補聴器を付けなくても、聞こえるのが羨ましいと思ったりもしましたね」
転機が訪れたのは中1の頃だった。担任の先生に誘われ、陸上部に加入。小6ですでに170センチを超えていた体格を生かし、未経験の砲丸投げに挑戦した。
最初は記録も全く伸びず。「あんまり楽しくないな」。帰宅部で人とかかわらず、1人でいる方が楽だった。
ただ、天性のサイズに秘めた才能が徐々に目覚め始めた。練習を重ねるうち、記録が伸び、中3の時には北海道大会に初出場。11メートル62をマークし、全道7位まで上り詰めた。
「聴覚障がいなんて、関係ない」
健常者に混じり、ライバルとして競い合う中で、いつしか自信が持てるようになった。気後れせずにコミュニケーションを取ると「砲丸投げも楽しくなりますし。自分の欠点も分かるようになった」。勇気を持って踏み出した一歩が環境を大きく変えた。
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