アジア大会競歩で違反続出のナゼ 背景に厚底普及も…元世界王者が見た「近年、日本勢に警告が増えた要因」
愛知・名古屋アジア大会の陸上は最初の種目、男子ハーフマラソン競歩が波乱の展開となった。レース序盤で先頭争いを演じていた李陳傑(中国)が歩型違反による4枚目のレッドカードで失格となるなど、上位選手に警告が連発。影響を受けた一人が、世界記録保持者の山西利和(愛知製鋼)だった。優勝候補と目されながら、3度の警告による2分間のペナルティゾーン待機が響いて1時間28分1秒で銀メダルに。警告が相次いだ背景にあるものとは――。競歩元世界王者の鈴木雄介さんの見解などをもとにひも解く。(取材・文=寺田 辰朗)

「THE ANSWER 陸上PLUS|INSIGHT」 アジア大会男子ハーフマラソン競歩(9/23)
愛知・名古屋アジア大会の陸上は最初の種目、男子ハーフマラソン競歩が波乱の展開となった。レース序盤で先頭争いを演じていた李陳傑(中国)が歩型違反による4枚目のレッドカードで失格となるなど、上位選手に警告が連発。影響を受けた一人が、世界記録保持者の山西利和(愛知製鋼)だった。優勝候補と目されながら、3度の警告による2分間のペナルティゾーン待機が響いて1時間28分1秒で銀メダルに。警告が相次いだ背景にあるものとは――。競歩元世界王者の鈴木雄介さんの見解などをもとにひも解く。(取材・文=寺田 辰朗)
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アジア大会の陸上競技は“荒れた”幕開きになった。最初の種目の男子ハーフマラソン競歩で、世界記録保持者の山西が警告を3枚出され、12km過ぎにペナルティゾーンで2分の待機を命じられた。
山西は昨年の東京世界陸上20km競歩でも15km過ぎにペナルティゾーンに入り、優勝争いから脱落して28位に終わっている。だが今回は、優勝した石升吉(中国)には4分29秒の大差をつけられたものの、3位のCHOE Byeongkwang(韓国)からは34秒差で逃げ切った。
「世界陸上と違って今回は(2分の待機後でも)2位にいたので、そこをキープすることが私の使命でした。代表のユニフォームを着ている限り、ここに出られない人の分までやらなければいけません。冷静さと耐える気持ちは保って銀メダルを取ることができました」
山西も最低限の役目は果たしたわけで、銀メダルという結果だけを見れば“荒れた”という言葉はそぐわない。だが今回のレースは金メダルの石も警告を2枚、銅メダルのCHOEも2枚出されていた。4位の吉川絢斗(富士通)は山西と同様、3枚の警告を出されてペナルティゾーンに入っている。上位選手にここまでレッドカードが出されることは珍しく、その意味では間違いなく“荒れた”レースだった。
競歩の判定は人間がする以上、主観にならざるを得ない。それを補うために、ペナルティゾーン入りの罰則が実行されるのは、異なる3人の審判から警告を出された時というルール<※>になっている。だが審判たちの判定に傾向が生じてしまうのは、競歩関係者の間でも既定のこととして語られている。
山西はレース後に以下のように話している。
「自分の歩型を客観的に見えているわけではないので、現段階のフィーリングだけで言うと『そんなに悪かったのかな』というのが正直な感想です。選手数が少なく、特定のエリアの審判も多いので、自分の認識とのズレがあるのかもしれません。反省というより整理しないといけないところが多い」
アジア大会のように出場人数が少ないと(男子9人、女子8人)、審判が1人1人を丁寧に見ることができ欠点を見つけやすい。さらには、女子との比較を審判がしやすかったことも、男子に警告が多く出た理由なのかもしれない。女子はスピードが遅いので、そもそも違反すれすれの動きにならないと言われている。その女子と同時に歩くことで、男子のぎりぎりの歩きが歩型違反にとられやすくなった、という競歩関係者の指摘が出ているのだ。男子が出場9人中8人に警告が出されたのに対し、女子は8人中4人にしか出されていない。
<※>競歩の歩型には2つの規程があり、1つ目は両足が同時に地面から離れてはならない(ロスオブコンタクト)、2つ目は踏み出した脚が地面についてから垂直になるまで、その脚は曲げてはならない(ベントニー)、というもの。その規程に違反している選手には注意(イエローパドル)が出され、注意されても直らない選手には警告(レッドカード)が出される。3人の審判から警告が出るとペナルティゾーンで待機(ハーフマラソン競歩は2分、マラソン競歩は4分30秒)を命じられる。ペナルティゾーンを出てさらに1枚警告が出ると失格になる。注意や警告が出されると思い切った歩きができなくなるなど、勝負に影響することもある。
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