アジア大会競歩で違反続出のナゼ 背景に厚底普及も…元世界王者が見た「近年、日本勢に警告が増えた要因」
どうしてアジア大会は警告が多かったのか
警告が多くなった理由の1つに厚底シューズの普及がある、と言われている。2016~17年からマラソンや駅伝で普及し始めた厚底シューズを、23年頃から競歩選手も履き始め、ヨーロッパや南米勢が世界大会で上位を占めるようになった。しかし反発が強いだけに浮いた歩きになり、ロスオブコンタクトの動きが疑われる選手が急増した。その状況に対し世界陸連も、歩型違反の基準を動画などで国際審判員に示し始めたという。
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日本競歩界初の金メダル(19年世界陸上ドーハ大会50km競歩)を獲得したレジェンドの1人、鈴木雄介さん(20km競歩前世界記録保持者、現サトウ食品アルビレックスRC所属新潟食料農業大コーチ)も、厚底シューズ以前から判定が甘くなり始めていたという。
「今年8月のU20世界陸上に弊学の選手が出場したため、映像で見ましたが、日本のジャッジの傾向だったら出されない歩きでも警告を多く出されていました。あくまでも私の感覚ですが、12年のロンドン五輪、13年のモスクワ世界陸上あたりから、ロスオブコンタクトのジャッジが甘くなったと思います。厚底シューズが普及して、それに合わせてまた判定が少し変わったと思いますが、そこも考慮して以前のように戻しているのかな、と私は考えています」
競歩界にも人間による判定に否定的な考えは出ていて、世界陸連が機械やコンピュータの導入を具体的に進めている、という話も聞こえてくるが、導入するには色々な障害があり、当分は人間によるジャッジが続くだろう。
しかし人間による判定の問題点を指摘するだけでは、国際大会で勝つことはできない。現場の選手と指導者は、どうすればいいのだろうか。
「昨年の東京世界陸上では、観戦している一般の方々から見て『跳んでるんじゃないの』と思える選手が昔に比べて多かったかな、と思います。これは日本の選手に限らず世界的に、です。でも専門家が競歩のジャッジとして見たらOKになる。それに加えて今の日本選手はピッチ型の選手がほとんどで、これが近年日本の選手に警告が多くなった要因かな、と私は考えています。そのピッチ型選手が日本に増えたのは、実は私がきっかけかもしれません。ただ私はちゃんとしたフォームで、絶対に跳んでいない自信を持った上で歩いていました」
その日本競歩界の現状を打破する方法を問いかけたところ、鈴木さんの答えは「素人の観客から、『あれは走っていない』と認めてもらえるフォームを目指すのが1番だと思う」と明快だった。
「私が現役の時はそう意識して、フォームを改善してきました。少し横暴な考え方になりますが、私に警告を出した審判が誤審だと周りに思わせるくらいの完成度と自信を持って試合に臨んでいました。実際、世界陸上、オリンピックレベルで警告を受けたのはテグ(11年世界陸上)で2枚出た時くらいで、その他の国際大会は警告が出たとしても1枚でした。特に注意の数は3枚以上になることはほとんどありませんでした。なので、注意を出されたとしても絶対に失格はない、という自信を競歩を始めてから引退するまで持っていました」
鈴木さんの現役時代はペナルティゾーンのルールがなく、3枚の警告で失格になったが、鈴木さんは競技生活で一度も失格しなかった。
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