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両親まで猛反対「お願いだからやめて」 トミー・ジョン手術を受けた女子野球選手が直面した壁「いつかは道ができる」

女子野球の強豪・埼玉西武ライオンズレディースに今季、韓国代表のエースが加入し日本一を目指している。25歳のキム・ラギョン投手は2度目の来日。前回2022年に日本球界へ挑戦した際には、初登板へ向けた練習中に右ひじを痛め、その後トミー・ジョン手術を受けた。負傷からの3年間、女子ならではの“障害”も乗り越え、マウンドに帰ってきたのだという。(取材・文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)

肘の靭帯を移植するトミー・ジョン手術を受け復帰したキム・ラギョン【写真:羽鳥慶太】
肘の靭帯を移植するトミー・ジョン手術を受け復帰したキム・ラギョン【写真:羽鳥慶太】

韓国代表のキム・ラギョン、初来日直後のマウンドで悲劇

 女子野球の強豪・埼玉西武ライオンズレディースに今季、韓国代表のエースが加入し日本一を目指している。25歳のキム・ラギョン投手は2度目の来日。前回2022年に日本球界へ挑戦した際には、初登板へ向けた練習中に右ひじを痛め、その後トミー・ジョン手術を受けた。負傷からの3年間、女子ならではの“障害”も乗り越え、マウンドに帰ってきたのだという。(取材・文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)

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「マウンドで、服が破れるような音がしたんです。ビリビリビリ……って」

 キム・ラギョンは3年前の苦い経験を、こう言葉にする。中学時代から韓国代表でプレーし、日本野球のレベルの高さを目の当たりにしてきた。女子が野球をできる環境がなかった韓国で、中学校3年までは男子のリトルリーグに所属できる“キム・ラギョン法”を誕生させたり、最高学府のソウル大野球部では男子に交じって投げた先駆者。次は日本で技術やシステムを学び母国に還元したいと、休学して実業団のアサヒトラスト入りした直後だった。

 6月に来日し数日後、初めての試合に臨んだ。相手は奇しくも、現在所属するライオンズレディース。リリーフに備えベンチ入りし、交代を告げられてマウンドに立った。投球練習を初めて3球目、聞き慣れない音とともに、肘に激痛が走った。

 数日後に画像診断を受けると、骨が折れているものの、靭帯は切れていないという診断だった。早く治して、まず打者として頑張ろうと思い、ギプスをしながらもトレーニングは欠かさなかった。しかし、いつまでたっても痛みが引かない。秋に韓国に帰ったタイミングで再び診察を受けると「完全破裂です」と告げられた。日本語にすれば、靭帯の完全断裂だった。

 すぐに、腱を移植する手術を受けた。7歳上の兄はかつて韓国プロ野球のハンファでプレーし、同じく肘の靭帯を痛めた経験があった。「兄が手術を2回受けているので、どんな痛みがあるとか、時間がかかるかは分かっていたんですが……」。ここで、女子選手ならではの障害があった。ずっと選手生活を応援してくれていた両親まで「そこまでやるの? お願いだからやめてほしい」と手術に反対したというのだ。

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