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「指導者が過保護になっている」 野口みずき、履き違えた「脱・根性論」に呈する疑問【THE ANSWER Best of 2021】

東京五輪の開催で盛り上がった2021年のスポーツ界。「THE ANSWER」は多くのアスリートや関係者らを取材し、記事を配信したが、その中から特に反響を集めた人気コンテンツを厳選。「THE ANSWER the Best Stories of 2021」と題し、改めて掲載する。今回は連載「THE ANSWER スペシャリスト論」から、女子マラソンのアテネ五輪金メダリスト・野口みずきさんが語った「脱・スポ根の今と未来」だ。

「脱・根性論」の時代、野口みずきさんは何を思うのか【写真:荒川祐史】
「脱・根性論」の時代、野口みずきさんは何を思うのか【写真:荒川祐史】

「THE ANSWER the Best Stories of 2021」 金メダリストが語る「脱・スポ根の今と未来」

 東京五輪の開催で盛り上がった2021年のスポーツ界。「THE ANSWER」は多くのアスリートや関係者らを取材し、記事を配信したが、その中から特に反響を集めた人気コンテンツを厳選。「THE ANSWER the Best Stories of 2021」と題し、改めて掲載する。今回は連載「THE ANSWER スペシャリスト論」から、女子マラソンのアテネ五輪金メダリスト・野口みずきさんが語った「脱・スポ根の今と未来」だ。


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 過度に追い込むスパルタ指導が減り、何よりも子どもに怪我をさせない風潮のある現代のスポーツ指導。この流れは日本のスポーツ界の未来にどんな影響をもたらすのか。「走った距離は裏切らない」をモットーにした野口さんは「量より質」と断言し、指導者と選手の立場が逆転した今のスポーツ指導に言及。競技力と精神面の成長に必要なことを語った。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 スポーツ指導において、厳しさはどの程度必要なのか。根性論で過度に追い込む指導が少なくなった昨今。スポーツの語源である「気晴らし」を重視する風潮が部活動にも増えてきた。ただ、時には厳しさも求められる。競技力の面でも、人間的教育の面でも、厳しさの“良いあんばい”が難しい。

 中学、高校年代の競技力向上には「量より質」と野口さんは断言する。

「その年代で量を走るとパンクしてしまう。選手の方向性にもよりますが、もし将来的に競技を続けたいのであれば、成長期は距離を踏ませない方がいいと私は思います。私の中学、高校時代の恩師は、巣立ってから活躍してほしいという気持ちの人が多かった。距離は踏ませず、質を上げていくにはどうしたらいいのかという考え。『やらせすぎない』という感覚です」

 自身は女子選手との練習が物足りなくなり、高2の終わり頃から男子選手と一緒に練習。実力に合わせて設定ペースを上げ、質を意識した。「一歩ずつレベルアップしていけた。流れにうまく乗れたのも指導者の導き、見極めが良かったから。あの時に思いきり量を走っていたら、実業団でどうなっていたかわからない」。実業団入り後も競技力に合わせた練習を行い、少しずつ強度を高めた。

 現役時代は「走った距離は裏切らない」「足が壊れても走りたい」をモットーに掲げた。アテネ五輪金メダル、日本記録更新で脚光を浴びたフレーズだが、とにかく量をこなせばいいという意味ではない。

 前編では、女子選手への厳しい体重管理で起きる“弊害”などについて語ってくれた。競技力と健康を両立させるには、適度な厳しさに加え、適度な量の食事を取る大切さを解説。だが、指導者の厳しすぎる管理を良しとしない一方、精神面の成長においては「脱・スポ根」の流れに疑問を呈する。

 今もなお破られていない女子マラソン日本記録保持者。「私は昔の考え方もある程度はあった方がいいと思います」と言葉に力を込め、今のスポーツ界に対する私見を述べてくれた。

「最近は(選手と指導者の立場が)逆転していますよね。選手の言動、行動を見ていると『何でも言えるんだ』というように見えます。今は何を考えているのかわからない選手もいる。自分が強くなるために指導者に期待して、泥臭いことをやるために入ってきたはずなのに、入ってきたらわがままだったり。指導者の立場が小さくなり、結果的に大学や高校の先生が過保護になっているような姿も見受けられます」

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