「日本の高校野球に進んだらプロになれない」 15歳で単身留学、パン1枚の食事…ドラフト戦線に現れた「カナダの大谷」の半生――ブリティッシュコロンビア大・杉本寛斎

コロナ禍でフィジカルが覚醒 187cm107kg、二刀流にも挑戦
高校2年生だった2020年春。世界を襲ったコロナ禍が、野球人生を変えた。
活動が制限された間、徹底して筋トレに励んだ。眠っていたフィジカルの素質に体の成長が追いつき、一気に開花。4年制の高校で3年から投手を本格的に始め、136キロだった球速が、卒業する頃には152キロに伸びた。
「もともと運動神経は良いほう。『体が大きければ負けへん』と思っていた」
米アリゾナ州の短大ヤバパイカレッジにスカウトされ、進学を勝ち取った。主戦投手を務め、3年からNAIA(全米大学対抗競技協会)に加盟するブリティッシュコロンビア大に編入。帰国時、プレーを見たプロ野球関係者に身体能力を買われ、「バッティングをやってみたら」と助言を受けたことが、もう一つの転機に。
編入2年目の昨季(2025-26年シーズン)は5年ぶりに野手としてプレー。すると、出場51試合で打率.335、3本塁打、34打点、OPS.858に16盗塁とあっさり結果を残し、二刀流の可能性も広げた。
「一番の強みはフィジカルと出力の高さ。どれもメジャークラスの数値が出る。それが自分の可能性に直結している」
コストコで買ったサーモン1キロを白米3合で平らげる大食漢。187センチ、107キロ、体脂肪率9%というアスリート体形に成長し、投げては最速158キロ、打っては打球速度170キロを超える。
8月の日本遠征で登板した試合には、巨人、日本ハムなど、噂を聞きつけた複数のNPB球団のスカウトが視察した。中学でレギュラーも取れなかった少年は今、「ドラフト隠し玉」としてメディアをざわつかせている。
海外生活8年目。「スギ」の名で愛され、大学では心理学を専攻する。野球以外は勉強漬け。「日本の高校野球に進んでいたら大学では絶対に野球をしていない」と言い切る。
「今、野球で上を目指すことができて、新しい友達に出会うことができたのは、15歳の時に一歩踏み出したから。周りに『よくやるね』と言われた。でも、野球が上手くなる、勉強する。毎日それしか考えていなかった」
よく笑い、無邪気で、夢の話になるとどこまでも真剣。週刊少年ジャンプの主人公みたいな男だ。
「しんどい経験はたくさんした」
でも、胸を張って言う。
「辞めたいと思ったことはない」
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