「山口に連れて帰ってくれ」 胸に突き刺さった兄の言葉、中学生の大野将平に芽生えた小さなプライド

中学生になって芽生えた「兄より強くなりたい」という感情
《講道学舎の入門試験を経て、大野少年は東京に出て新たなスタートを切ることになる。希望に満ちた未来が待っているかと思いきや、その真逆であった。強くなれるとの思いも、段々と萎んでいった》
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入門試験があって私の成績は10人中8番くらいでした。それはもう散々な結果です。見ている先輩たちの1人に兄がいました。学年でも一番だった兄は、不甲斐ない私を見て「恥ずかしいから山口に連れて帰ってくれ」と母に言いました。どれだけ悔しかったか。小学生の頃、兄は憧れの存在でしたけど、中学生になると“目の上のたんこぶ”みたいな気持ちにもなりました。レベルはまったく違うとはいえ、いずれ兄より強くなりたいという感情が芽生えたのです。
講道学舎での毎日は、もう思い返したくもないくらいです。実戦の稽古を乱取りと言いますが、大学でも6分10本が一般的。しかし講道学舎は10分12本が基本で、そもそも量が圧倒的に違います。1本も休めないし、私の時代は水も飲めなかった。今やれと言われたら、無理だなって思います。
練習の後は、私のように体が小さい人はどんぶり飯を3杯食べなければなりませんでした。あれだけ稽古した後に、食べろと言われてもなかなか喉を通らないもの。1杯目は高校生の先輩がよそってくれるのですが、ラーメン鉢2つを合わせる“日本昔話盛り”というやり方。これがたまらなくきついんです。2杯目からは自分たちでよそうことができるので、半分だけ高くしてもう半分をスカスカにするとか、ふんわり盛るとかいろいろと工夫しました。
朝は5時40分に起床の太鼓が鳴ります。中学生はその瞬間に起きて、玄関前に出てランニングする準備をしなければなりません。先輩たちは歯磨きして着替えてから出てきて、5分後には駒沢公園にみんなで走りに行きます。当然、朝の稽古もあります。学校が終わってからも、きつい稽古としんどい食事が待ち受けています。
その後も洗濯、掃除などいろんな雑用が待っていて、洗濯は一番下っ端の自分は最後になるので、朝5時に起きてからすることもありました。なかなか熟睡できないから、授業になると睡魔に勝てない。唯一、息を抜けるのが中学校でしたし、授業中によく居眠りをしてしまっていました。肝心の柔道のほうも箸にも棒にもかからぬほどのレベルだったと思います。
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