ラグビー日本代表「10番」争いに新星 W杯まで1年…エディーの言葉をなぞる明大4年生の“原石”
エディーが求めるSO像は「ボールを欲しがる選手」
試合を通じて印象深かったのは、伊藤のコメントにもあるように、ボールを持って相手に正対して前に仕掛けられるSOとしての資質だ。このプレーによりライリーをはじめとした快足揃いのBKラインがさらに引っ張り上げられることで、そのアグレッシブさが増長させられることになる。
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6月10日、都内で行われた代表メンバー発表会見で、エディーはこれから求められるジャパンのSO像をこう力説した。
「今回選んだ10番に何を求めるか。ボールを欲しがる選手になってほしいです。15年くらい前のラグビーを見ると、ストラクチャー(事前に準備された陣形や戦術)ベースで、決められた形の中でゲームが展開されていた。だが、今はスピード重視になってきている。ボールを持って相手の防御ラインに対してしっかりと仕掛けることが出来る10番が必要です。その周りにしっかりと攻撃のオプションがあって、パワーを生かすのか、それともワイドスペースに攻めるのか選択できるSOですね。それが日本代表らしいプレーになるはずだし、我々が唱える所謂“超速ラグビー”にも繋がるのです」
まるで、この言葉をなぞるような伊藤の80分間だった。パスの後は、再び足技に切り替えた。ライリーのトライから僅か3分。マオリが、伊藤の動きを封じるかのようにかぶり気味に上げてきた防御ラインの裏にボックスキック。WTBイノケ・ブルア(神戸S)がインゴールで楕円球を押さえた。
スタッツを見ると、ボールキャリー(ボールを持って前進した回数)14、防御突破6回は両チーム1位、キャリーメーター(ボールを持っての走行距離)76mはライリーに次ぐ2位と“ルーキー”らしからぬ数値も残す。クレバーにして、21歳で既に老獪さも滲ませる3アシストと、数値が物語るプレーヤーとしての能力の高さで、来年のW杯へ向けた司令塔争いに大きなインパクトを残した。
チームとしての80分間を見ると、過去1勝5敗(正代表の1敗を含む)の難敵を相手に前半の24-7という優位を守れず、後半20分過ぎからの4連続トライで勝負をひっくり返された。宮崎で続く強化合宿で話を聞いた選手たちは、「ゴールド」という言葉を盛んに口にしていた。これは、新しい考え方ではなく、世界中で重視されているプレー中の「エフォート(努力、労力)」、つまり献身的な努力を、最上級=ゴールドにしなければ、日本は上位国に勝てないという考え方を強く意識付け、メンバー全員で共有するための象徴的なキーワードだ。マオリ戦を見る限りは、ゴールドは勝負の最終クォーター(残り20分)でその輝きを失ってしまった。
前半は、より多くの選手が“ゴールド”なプレーで、接点でのファイト、集散を繰り返したことも伊藤の3アシスト、ゲームの主導権掌握にも繋がったが、運動量が落ちてエフォートが激減した後半、とりわけ20分以降は為す術なくマオリの猛攻を浴びた。相手が、日本の低いタックルをプレーしながら分析して、低く入られてもニュージーランドラグビーの強みでもあるオフロードパスでボールを繋ぎ、時にはパワー勝負のダイレクトプレーでXVの防御をこじ開け、硬軟織り交ぜた攻撃を徹底。後半27分にみせた選手4人がオフロードパス3本を繋いで仕留めたトライが圧巻だった。
宮崎合宿で取材に応じたNo8/FLリーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)は「今年は勝ちにいく。経験値を上げるのは去年まで。結果を重視する1年にしたい」と明言していたが、テストマッチではなかったものの、その“公約”はスタートで破られてしまった。リーチは、昨季かろうじてジョージアを倒す水域まで達したチームの進化、来年のW杯からの逆算、そしてファンのためにも過去2年のような負け続きのシーズンは繰り返せないという思いで必勝を明言したのだが、マオリ戦の黒星で露呈したのは、毎日の練習で意識してきた「エフォート」「ゴールド」も、強豪相手に後半はガス欠してしまうのがジャパンの「今の」実力だという現実だった。
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