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「人生4周分の注射」で耐えたW杯 手術8度、ビジネス雄叫び…最高に“漢”だったラグビー人生――垣永真之介

垣永がサンゴリアスの仲間たちに託す想いとは【写真:(C)東京サンゴリアス】
垣永がサンゴリアスの仲間たちに託す想いとは【写真:(C)東京サンゴリアス】

歩む第二の人生 仲間に託す想い「いい漢になって」

「ラジオをやると、ラグビーという共通点だけで、皆さん無茶苦茶仲良くなって、繋がりが出来ている。そういう人たち同士で旅行に行ったりしているんです。人と話すとき、僕は好きなものは何かと聞くのが楽しくてしようがないんです。そう聞くと、皆めっちゃ輝いて話すんですよね。だから、日常的に使えるアパレルとかでラグビー好きが繋がればすごくいいなと思った。でも、普段着られるラグビーがデザインされたものってあまり多くないでしょ。だから、ラグビー場以外でも好きな人たちが、ウェアとかで繋がれるのって嬉しいなと思ったのが始まりなんです」

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 ラグビーを愛する人たちが衣類や小物を通じて繋がり、親交を深めることが日常的に出来る――。こんな可能性を思い浮かべて事業を立ち上げたカッキーだったが、更に興味深いのは「スクラムタイム」を立ち上げる時のもう一つの欠かせないコンセプトだった。

「自分のやりたい事(アパレル事業)と支援が同時だったんです。ラグビー絡みの支援をすることが前提で、このアパレルはスタートしたんです。コレ僕にとっては公約みたいなものです」

 支援の対象になるのは、原則的には年齢やカテゴリーに関係なく、部員不足や資金難で活動もままならない高校ラグビー部やクラブチーム、団体などだという。スクラムタイムの収益の一部を使って、ラグビー用具等を支給している。最近では創立50周年を迎えた福島・郡山ラグビースクールにボール50個を贈った。

「100万円くらいの支援もしたりしていますが、サラリーマンなので僕にとっては大きい額です。でも皆のためになるならという感じです。私立校なんかは設備もあるけれど、地方の公立校とかに行くと、ツルツルのボールばかりで、泥だらけのタックルバッグを使ったりしている。そういう環境の中でラグビーをやっている子って、すごくラグビー好きなんだと思うんです。きっと大人になってもずっとラグビー愛してくれると思うし、ずっとラグビーが好きでいてほしい」

 自分自身は全国で名立たる私立の名門でプレーしてきたが、眼差しは恵まれない環境でも楕円球を追い続ける子供たちに注がれる。言葉にカッキー自身のラグビー愛が滲む。

「僕自身は苦しみながらのラグビー人生でしたが、ラグビーって本当にいい競技だと思うんです。こういう時代なんで安全重視ということもありますが、ラグビーには大事なことが詰まっている。やっている人は感じるだろうし、観ている人にも伝わると思いますが、ラグビーの80分って本当に人生みたいじゃないですか。だから面白い。新しく人を増やすのは僕ごときじゃ無理ですけれど、だったら好きな人を大事にしたい。辞めずに好きでい続けて欲しいなと思っているんです。全てのチーム、高校とはいかなくても、縁があったり、声を聞いた人たちに、せめて道具くらいいいものを使わせてあげたい。収益の一部をそんな子供たち、ラグビーに還元したいんです」

 サントリーが認める副業制度を利用しての活動だが、選手を引退してもこの“事業”は可能な限りは続投する方針だ。そんなカッキーだが、引退を決意する時は他のチームでの再挑戦、つまり移籍は全く考えなかった。サンゴリアス一筋12年。チームへの愛情は誰にも負けない。

「サンゴリアスで多くの先輩達から学んだのは、チームに徹することです。トップ選手が集まっていますが、そんな選手が、本当は自分でやりたいプレーってめちゃめちゃあると思うんです。でも、それを封印してチームのために皆が走っている。自我を殺して、ディフェンスでもアタックでもサントリーのラグビーやカルチャーを押し通すために、仲間のためにね。そんな思いを背負って、泥臭くラグビーするチームが好きでした。試合をしていると、相手に何度ラインブレークされても、なんでこんなに黄色い(サンゴリアスの)ジャージーが戻っているんだ、自分たちが突破したら何人黄色い選手が上がっているんだと。そういうところが大好きでしたね」

 そんなサンゴリアス愛に満ちた男から、仲間に託す思いがある。

「勿論、優勝してほしいですが、僕の中での最高の誉め言葉って“いい漢(おとこ)”だなと言われることなんです。優しいねとかいい人じゃなくてね。いい漢じゃないとサンゴリアスでラグビーは出来ないと思うんです。だから皆にはいい漢になって、悔いなくラグビーを全うして欲しいですね」

 引退試合となった3位決定戦は黒星で終えたが、それも山と谷ばかりのラグビー人生にはアリかも知れない。入社当時から社員契約のため、この先は会社の辞令次第という。ファンへ向けては「本当に、何度も終わりかけた僕のラグビー選手という物語を、何度も救っていただき、皆さんが書き続けてくれました。これ以上の幸せなラグビー人生はないと思います」と感謝しきれない思いを口にしたが、湿っぽさを求めた誘導尋問の“引退インタビュー”は、不敵な笑みでこう喝破した。

「生まれ変わったら? 松島幸太朗(サンゴリアスFB)になりたいですね。もうPRはいいです!」

 栄光も掴み、何度も怪我に泣かされる七転八倒のラグビー人生を駆け抜けた。楕円のゴールラインを切ったカッキーの姿は、間違いなくいい漢だった。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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