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ポスト福岡堅樹は誰? ポジション争い熾烈なSH ラグビー日本代表が18か月ぶり再始動

注目ライオンズ戦へ指揮官は自信「1試合多く事前に試合ができる」

 新旧メンバー、そして36か月規約をクリアした選手のポジション争い、コロナの中での強化の先には、ライオンズとの歴史的な一戦が待っている。このゲームを、どう戦い、勝利するかが今回の合宿・遠征の最大のミッションでありターゲットになるのは明らかだ。

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 ライオンズはイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド代表の連合軍。言い換えれば、フランス、イタリアを除いた6か国対抗のオールスターチームと表現するのが適当だろうか。4年に1度しか編成されず、その試合も南半球への遠征が大半のために、スコットランドでその雄姿が見られること自体が異例のことになる。

 日本戦は、2005年にカーディフで行われたアルゼンチン代表戦以来の“ホームゲーム”だ。日本代表にとっても、次回の対戦が実現するかはニュージーランドや南アフリカ代表以上に難しい相手だが、ジョセフHCは“思い出作り”に終わらせる気持ちは一切ないはずだ。この歴史的な対戦について、指揮官は興味深い話をしている。

「サンウルブズ戦を有意義に使わなければいけない。ライオンズよりも1試合多く事前に試合ができることになる。なので、この試合を有効に使っていくこと、同時に後半でもしっかりと、インパクトのある選手が出てくるような、強度の高い試合ができることが重要だと考えている」

 ポイントになるのは、ライオンズが編成後初めてのゲームになるのに対して、日本はウォームアップゲームを経ての対戦になることだ。このアドバンテージについては、奇しくも21日に取材したスコットランドの英雄、SHグレイグ・レイドローが、こう指摘している。

「すこし日本にアドバンテージがあるとすれば、ライオンズは最初の1、2試合は調整不足もあり、あまりいいゲームができないことが多い。そこはチャンスだろう」

 ライオンズOBのレイドローが語るように、過去の戦いぶりをみても、遠征序盤に苦戦を強いられ、地域代表クラスのチームに敗れることも少なくない。2017年に行われた前回のニュージーランド(NZ)遠征でも、初戦のNZバーバリアンズ戦を13-7で逃げ切ったが、2戦目でブルーズに16-22、4戦目にハイランダーズに23-22で競り負けている。

 1つの国の代表チームなら1年で数週間は一緒にプレーするが、ライオンズにはそのような下地はなく、プレースタイルも価値観も異なる選手が集められたチームだ。そのため、試合を重ねることで、コンビネーション、戦術理解を高め、同時にメンバーセレクションも積み上げていくのが特徴だ。ライオンズでのプレーも経験するレイドローのコメントは傾聴に値する。

 その一方で、日本代表にも不安要素は少なくない。ライオンズのメンバーは、すでに昨秋から各国代表で真剣勝負を繰り広げているが、日本は2019年W杯以降テストマッチどころか合宿も行っていない。組織プレーの精度を高めた戦い方が強みの日本にとって、チームを作り上げる“時間”は他国以上に重要かつ不可欠な要素になるため、今回の大分合宿からの準備で、どこまで完成度を高めることが出来るかが勝負になる。

 もちろん、ジョセフHCは、大分での活動再開以前から、打倒ライオンズに着手している。

「もうすでにリーダーのメンバーたちとは(ズームを使うなどして)話をし始めている。いちばんキーになるのは、ここの段階からしっかりチームが繋がっていくことだと話をした。2019年のW杯で何が良かったのかを考えてみると、チームとして団結していった、タイトだった、しっかりチームとしてコネクトしていけたこと。それを、今からしっかりと始めなければいけない。合宿前から先手を取って、スタートしていこうと話した。それをすることによって選手全員が合流したときには、しっかりしたいい関係が出来、チームとしても前に進めてけるはずだ」

 日本代表の戦術の中枢であるトニー・ブラウン・アシスタントコーチが、自らがHCを務めるハイランダーズの指揮を早々に手渡し、日本代表コーチとしての仕事に着手しているのは朗報だ。限られた時間で、どこまで戦術を深め、完成度を高めることができるかが、ライオンズ戦を歴史的な一戦にするか、単なる相手チームのウォームアップ試合にするかの分水嶺になる。

 先にも書いたように、2023年へ向けたレースでは日本代表は大きく出遅れている。そして、アウエーでのアイルランド戦が決まった時点で、7月までに国内でテストマッチを行う可能性はほぼ消滅した。今シーズンの代表戦はテスト2試合、ノンテスト1試合しか行われない。このような状況の中で、新生ジェイミージャパンがライオンズを苦しめ、倒すようなことがあれば、エディー・ジョーンズHCの下での2013年のウェールズ戦の金星、ジョセフ体制での同代表を敵地で追い詰めた16年の大接戦(30-33)や17年のフランスとの引き分けと並び、それ以上に、2023年のフランスへ向けてチームに自信と勢いをつける起爆剤になるはずだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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