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ポスト福岡堅樹は誰? ポジション争い熾烈なSH ラグビー日本代表が18か月ぶり再始動

茂野海人【写真:Getty Images】
茂野海人【写真:Getty Images】

ポスト福岡を占うWTBのポジション争いに注目

 ポジション争いでは、ポスト福岡堅樹を占うWTBが注目だ。4月に順天堂大医学部に入学したために、トップリーグを最後に現役を引退した福岡だが、今回の合宿メンバーを見渡すと、その穴を埋めるほどのスピードの持ち主は少ない。もう一方のWTB兼FBはフランスでも活躍する松島幸太朗が健在だが、福岡級のスピードを持つ初選出のセミシ・マシレワはコンタクトと防御には不安を残す。

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 経験豊富なレメキ・ロマノ・ラヴァに期待したいところだが、怪我による長期離脱で回復具合が気掛かりだ。注目したいのは、サンウルブズで実績を残すシオサイア・フィフィタだが、マシレワ同様に防御に課題がある。福岡の穴埋めは、初選出ながら経験値の高いゲラード・ファンデンヒーファーや可能性を秘めたフィフィタらフィジカルの強さが武器のWTBを使いながら適性を見ていくことになりそうだ。

 WTBとともに注目されるのが、SHのポジション争いだろう。フレッシュな顔ぶれになったが、2019年W杯で活躍した田中史朗、流大が選外となったのは、すでに評価が固まっていることと、コンディションを重視したためで、刷新という捉え方はできない。2019年大会に選ばれながら出場機会がなかったが、今季のトヨタ自動車ではチームの躍進を支えた茂野海人、パス、キック、戦術眼と将来性抜群の齋藤直人、サイズが魅力の荒井康植が、どこまで不在の2019年組に肉薄できるかが試される。

 このような状況の中で、27日に怪我のためにWTB江見翔太が合宿参加を辞退して、代わりに高橋汰地が招集されたのは興味深い。トヨタ自動車ヴェルブリッツで2シーズンをプレーした高橋は、事前に発表された候補メンバーにも選ばれていなかった選手だが、チームでもハイボールへの無類の強さ、スピードとステップを駆使した突破力に加えて、試合を重ねるごとにポジションに関係なく、チャンスでボールを貰いに行く積極性も見せてきた。国際舞台での経験値は少ないが、潜在能力はかなり高いのは間違いない。今回の臨時招集で代表クラスのスタンダードを体感することで、自らのポテンシャルをさらに輝かせることに期待したい。

 次回W杯へのポジション争いを考えると、今回選ばれた3人が争うというよりも、評価が固まっている流や田中、前回Wまでに代表経験もある内田啓太らも交えたレースになると考えていいだろう。トータルバランが高く、サンウルブズでも判断力の高さを見せた齋藤が、代表戦という高い水準の試合でどこまで自身のスタンダードを見せることができるかに注目したい。

 上記してきたフィフィタ、齋藤に加えて、コンタクトの激しさが持ち味のFLベン・ガンターという20代前半の若手が、代表戦でジョゼフHCの期待に応えることができれば、2019年メンバーからの世代交代に拍車がかかることになるだろう。

 チームの活動に目を向けると、今季に関してはコロナ感染の影響を、どこまで回避しながら効果的な強化ができるかが大きな挑戦になる。ライオンズ戦が行われる英国の場合、海外からの渡航者には入国から10日間のホテル等での隔離措置が求められている。日本代表は、6月12日に静岡でサンウルブズとの強化試合を終えて16日の渡英を準備している。

 隔離措置と試合への準備が不安視されるが、日本協会の岩渕健輔専務理事は「ヨーロッパの国々は6か国対抗、各国リーグ間の試合も行われている。エリートスポーツが国を跨いで行われるのは、すでに、かなり頻繁に行われている。ライオンズ戦は英国の中でトップカテゴリーと位置付けられたスポーツイベントになっている。その観点から、特別な措置をしていただいて、現地に入ってもトレーニングを含めて前向きな形でできることになっている」と、行動制限はかなり厳しい中でも特別措置が取られるために、練習などの環境は確保できていると説明する。

 アイルランド共和国への国境を跨ぐ移動についても、「6か国対抗で適用されていたような形でできないかと話しをしている。ライオンズ戦の1週間後に試合があるので、トレーニングが許されなければ試合は行えない。前向きな形でやらせていただけると聞いている」として、今春の6か国対抗と同様の扱いでの、移動に関しての特別措置を各国政府、協会と調整している。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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